プロスポーツ

最大の危機 本音ぶつけ合える真の結束を

まさに〝ジェットコースター〟に乗ったかのようなスリルに満ちた戦いぶりだが、どこまで落ちていくのだろう。AC長野パルセイロは第11節から8戦未勝利(2分け6敗)と急失速して首位から陥落し、第18節を終えて14位に沈む。長期停滞にはまり込んだチームに一体、何が起きているのか。

 第15節の北九州戦で引き分けて連敗を4で止め、浮上のきっかけをつかんだかに見えたが、本当の試練はここからだった。続く第16節の今治戦は、ホームの長野Uスタジアムで久々の勝利を期待したサポーターの目前で、まさかの今季最多4失点で大敗。さらに第17戦の八戸戦も0―4と惨敗し、奈落の底に突き落とされた。

 とりわけ、今治戦は目も当てられないような内容だった。安易なミスや球際で圧倒されるシーンが目立った。DF池ケ谷颯斗は「みんな頑張っているけれど(戦い方で)同じ『絵』を描けていない。あとはシンプルにデュエル(球際)で負けていることが多い」と声を落とした。八戸戦に向けた練習後には、シュタルフ悠紀監督が「プロなんだからプロらしいプレーを見せてくれ。自分のベストを毎日出す。その仕事をやってるのか」と選手たちを一喝して緊張感が走った。

 スランプの渦中にいると、根本的な原因は見えにくい。その意味で、復活へのヒントを得たのはアウェーの八戸戦だった。主将のDF秋山拓也は警告累積で出場停止となったため、中継映像で仲間の戦いを見守った。「でも『逆転してやるぞ』という気持ちが伝わってこなかった。自分が出ていた時もこうだったのかもしれない。あと、画面越しだけど、一部の選手の声しか聞こえなくて…。選手同士が意思疎通できていれば防げた失点もあったと思う。これが苦しい結果が続いている理由かもしれない」。一歩引いた目線で試合を観戦したことでチームが抱える課題を痛感した。

 それを受けて第18節の鳥取戦を前に、今季初めてとなる選手だけの全体ミーティングを行った。一人一人が、チームの現状について思うことや今季に懸ける思いを率直に話した。副主将のMF佐藤祐太は「なかなか選手それぞれの思いを聞く機会はなかったし、本心を聞くことができて心震えるものがあった。結局、サッカーは一人じゃできない。選手それぞれに役割があるし、もう一度チームとして結束しようと再確認できたことが大きかった」と振り返る。

 ホームで迎えた鳥取戦は1点リードしながら、後半48分に直接FKを決められ、土壇場で白星を取りこぼした。それでもシュタルフ監督は「後半の勇気を出してプレーしている時間帯は自分たちのフットボールを取り戻せていた。少しずつ復活の兆しが見えている」と手応えを口にした。
 仲間であっても本音をぶつけ合えば、時として衝突や軋轢が生まれる。それを乗り越えて本当の意味で信頼し合える真の「ワンチーム」になれるか。最大の危機は続くがここを乗り越えれば、また強くなれる。