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もどかしさ募る序盤戦真の「強さ」を求めて

「チームの現状を他の選手がどう理解しているかはわからないけど、自分はすごく悲惨な状態だと思っている」。今季初の黒星を喫したJ3第4節・福島ユナイテッドFC戦の後、キャプテンの菊井悠介は危機感を口にした。霜田正浩監督2年目となり、充実の陣容を整えて返り咲きを狙う松本山雅FC。トレーニングキャンプは順調に進んだように見えたものの、いざ開幕すると思わぬ苦戦を強いられている。
 開幕戦を白星で飾ったまでは理想的だったが、続く第2〜4節は勝ちなし。ドローが2試合続いた後に黒星となった。「失点を減らす」という強い決意とともにシーズンが始動したものの、ルヴァンカップも含めた全5試合で失点(3月18日現在)。ボールを動かして攻撃の時間自体は多いが、少ないピンチをことごとく決められてしまっている。
 「結果(無失点)で示さなければいけないし、それでしか評価はされない」。DF常田克人も現状での課題を口にする。実際にキャンプでは自陣左右サイドでの守備など昨季の弱点に対して改善を図っていたが、公式戦で目に見える結果には出ていない。それ以外にもやすやすと中央突破を許すなど、無駄な失点が引き続き目につく。
 攻撃も、キャンプで練り上げてきた迫力を出し切れていない。ボールを動かしながら逆を突くプレーを志向しているものの、試合によって遂行度が大きく異なるのが現状だ。「キャンプでやってきて自信がある部分が出せていない。このチームはもっと圧倒できるし、チャンスもつくれるはず」と新加入の右サイドバック馬渡和彰。もどかしさが募る。
 今季のクラブスローガンは「ツヨクナル」。強さとはなんだろうか。相手やチーム状況や外的環境によってパフォーマンスの波が大きく、結果も左右されることは決して強さとは言えない。むしろ波はあってもしたたかに勝ち切れるのであれば「強い」と言えるだろう。その意味ではまだ、大いに成長の余地を残している。
 もちろん昨季からの違いが明確に出ているのも確か。ボールを受けることを怖がる選手はいなくなり、自陣から丁寧にボールを動かす。相手の変化を見ながら修正する対応力も徐々に出てきたし、失点しても下を向かないマインドも見え始めた。GK神田渉馬と樋口大輝のアカデミー出身者2人が開幕スタメンに名を連ね、その後もピッチで奮闘している。
 こうした明るい材料を、勝点3に変換させなければ意味はない。つぼみが花開かず地面に落ちたとして、それを愛でる人は果たしてどれだけいるだろうか。リーグ戦4試合を終えた段階で1勝2分1敗と、スタートダッシュはかなわず。せめて遅咲きの花を精いっぱい咲かせ、必死に巻き返すしかない。

取材/大枝令