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「悔しさ」を原動力に J2昇格へ勝負のシーズン

J3松本山雅FCの2024シーズンが始動した。実績と経験のある選手を中心に10人を補強し、リーグ屈指の充実した陣容を整えた。霜田正浩監督が率いて2年目。J3で9位に終わった昨季の無念さを共有しながら、J2昇格を目指していく。

 ジュビロ磐田からMF山本康裕、浦和レッズからDF馬渡和彰、横浜FCからMF高井和馬、FC町田ゼルビアからDF高橋祥平をそれぞれ完全移籍で獲得。いずれもJ1での経験を有する経験豊富な選手たちだ。チーム編成を担う下條佳明スポーツダイレクターは「主体的に攻撃的なサッカーをやるという部分で、いろいろなポジションの競争力を上げるのが一番の目的」と説明した。
 磐田で元日本代表MF遠藤保仁とボランチを組んでいた山本は「30歳を過ぎて多少くすぶっていた部分もあったが、ヤットさん(遠藤)が来てパッとサッカー観が変わった」と明かし、「今年J2に上がって、最短2年でJ1に上がるのが至上命題」と力を込めた。
 馬渡はJ3ガイナーレ鳥取からキャリアを始め、サンフレッチェ広島や川崎フロンターレなどでもプレーしたサイドバック。「『一緒に這い上がろう』という言葉でオファーしていただき、自分自身その言葉に救われた。またここから自分が這い上がれるか。そういう意味も含めてワクワクしている」と決意を口にした。
 既存の選手も覚悟を胸に、再び松本山雅で戦うことを決めた。今季背番号10を託されたMF菊井悠介は「背番号に恥じないプレーをすることはもちろん、昇格しか考えていない。また今年も皆さんの力を貸してくれると本当にうれしい」とサポーターに呼びかけ、在籍6年目を迎えたMF米原秀亮も「加入してから悔しい思いしかしていない。今年はしっかりJ3優勝という目標を達成して、いい一年にしたい」と話した。
 クラブのスローガンは「One Soul ツヨクナル」。フィジカル、メンタルなど個人の強さはもちろん、大事な局面で結果を出す勝負強さ、組織としての結束の強さ、地域のステークホルダーとの繋がりの強さ。今まで積み上げてきたものを継続しながら、さまざまな「ツヨサ」を加えて進化していく――という思いを込めた。
 実際に昨季は勝負どころの終盤戦で白星を挙げられず、可能性を手放してJ3残留となった。霜田監督のスタイルを継続しつつ、編成も含めたブラッシュアップで返り咲きを期す。1月15日〜2月16日は和歌山県串本町と鹿児島県鹿児島市でトレーニングキャンプ。例年通りの長丁場で、シーズンの最後に歓喜とともに終えられるよう臥薪嘗胆の日々を送る。
 霜田監督は「今年のJ3はどこも悔しい思いをしているチームばかり。その中で勝ち抜いていくために一番必要なのは、心だと思う。松本という街に根付いているサッカー文化、歴史、栄光、そして悔しさ。そういうものを大切にしながら、皆さんと一緒に戦っていく。心を鍛え、心を整えて、謙虚に丁寧に目の前の試合に集中して勝点を積み上げ、最後の最後にシャーレを掲げたい」と決意を口にする。

取材・撮影/大枝令