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勝負の秋で苦しみ 昇格に向けて得点増を

戦術の変化に適応しながらも、さまざまな障壁に阻まれた。AC長野パルセイロは9月に入り、3試合を終えて1分2敗(9月19日時点)。いずれも1点差の試合を競り負け、後退を余儀なくされた。
 チームは8月初陣の第20節カターレ富山戦から戦術を変更。攻撃時は4―4―2、守備時は3―6―1となる可変システムを敷いた。8月の3試合を2勝1敗と勝ち越し、9月はアウェイ2連戦からスタート。J2昇格に向けて勝負の秋を迎えた。

 第23節の首位・いわきFC戦は0―1と惜敗。3分に藤森亮志がペナルティエリア内でカットインし、相手に脚をかけられるも笛は鳴らず。前半は多くの決定機を演出した一方で、後半はいわきの圧力に屈して終盤の1点に泣いた。
 続く第24節・FC岐阜戦も苦しい展開だった。押し込まれる時間が続く中、83分にFKから乾大知のヘッドで先制。しかし最終盤、相手のシュートを秋山拓也が肩でブロックするも、無情にもハンドの判定を受ける。90分にPKを沈められ、1―1のドローに終わった。
 「悔しさは少しどころではない」とシュタルフ悠紀リヒャルト監督。この2試合はビルドアップで相手を自陣に引き込み、その背後を突く戦法を徹底していた。それが功を奏したシーンも少なくなかったが、判定にも恵まれず1分1敗。大きなフラストレーションを抱え、まるで2連敗したかのような空気感だった。
 そしてホームに帰還した第25節・福島ユナイテッドFC戦。パス数がリーグ1位を誇る相手に対し、序盤から主導権を握る時間が続く。27分には宮本拓弥のクロスから山本大貴がネットを揺らすも、惜しくもオフサイドの判定。得点の匂いを漂わせて前半を折り返した。

 だが、後半は一転して福島がペースをつかむ。リーグ屈指のポゼッションに対して受け身になる時間が続くと、67分にカウンターから失点。その後の反撃も及ばず0―1で敗れ、3試合勝ちなしとなった。
 「決定機を増やさないと、カウンター一発で沈められても仕方がない」と指揮官は言う。ビルドアップに磨きをかける一方で、相手のプレスをかいくぐった後の質が課題。第19節以降は7試合複数得点がなく、まずはチャンスの総数を増やすことが求められる。


 チームは9試合を残し、昇格圏内の2位・鹿児島ユナイテッドFCと勝ち点13差。J2昇格に向けて引き分けすら許されない、切迫した状況が続く。残された時間でいかに攻撃の質を高めつつ、ゴール前での感覚を研ぎ澄ませられるか。可能性がある限り、「Never Give Up」の精神で戦い続ける。

取材/田中紘夢
撮影/相野田祐静