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シュタルフ長野始動 追い求める過程と結果

「この日をすごく楽しみにしていた」。そう語るシュタルフ悠紀リヒャルト監督の目は、野心に溢れていた。1月19日、AC長野パルセイロが初練習を実施。雪が残るグラウンドで、約2時間にわたって汗を流した。

 チームは昨季、得点力不足が響いて9位でフィニッシュ。それを踏まえ、今季は攻撃的なサッカーを志向するシュタルフ監督を招へいした。37歳の新指揮官がまず選手に伝えたのは、“オレンジ(ORANGE)の志”だ。Oは「One Team」、Rは「Run Fast」、Aは「Aggressive Duel」、Nは「Never Give Up」、Gは「Grow Everyday」、Eは「Enjoy Football」を意味する。その中で「コミュニケーションはめちゃくちゃ意識づけしたい。一人ひとりが強くたくましいライオンとなって、群れで戦えるチームを作りたい」とOne Teamを強調。その言葉通り、初日から活発なコミュニケーションが生まれていた。

 一方、戦術面では「コンセプトの中に24個の原則が定められている。その原則をしっかりと選手に覚えてもらうのが、プレシーズンの大きな目標」と、早くも独特なサッカー観が垣間見えた。初日は24個のうち「ダイヤ」と「ローテ」の2個を提示。いわゆるトライアングルの形成と、流動的なポジションチェンジに焦点を当てた。

 とはいえ、これは過程の話だ。指揮官が「ゴールシーンを増やしたい」と言うように、得点が生まれなければ何の意味もない。昨季チームトップの9得点を挙げた三田尚希は、「毎年2桁、10点を目標と言ってきた。ここ何年か10点は取っていたが、それ以上は行っていない。15点、20点と取れるように努力したい」と上を見据えた。また、母校である青森山田高校の全国制覇を受け、「後輩があれだけ活躍しているので負けていられない」と刺激を得ている。

 さらに今季は新たな得点源として、上位カテゴリーでキャリアを積んできた山本大貴と、2020年にJ3で14ゴールを挙げた宮本拓弥を獲得。このうち山本は、松本山雅FCに足掛け5年在籍した経験を持ち、信州を知る男でもある。来たる11年ぶりの信州ダービーに向け、「古巣には負けたくない。『長野県はAC長野パルセイロだ』と思ってもらえるように頑張りたい」と意気込んだ。

 彼らもまずは出場機会を確保しなければ、ゴールは奪えない。チームは県内での練習を経て、1月末日から約1カ月間の御殿場キャンプに突入。霊峰富士の東麓で、熾烈なポジション争いが待っている。

取材・撮影/田中紘夢