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雪上を自由自在! 異彩放つ高校生スノーボーダー

 「勝ち負けに関係なく、みんなで滑っている時が一番楽しい」。スノーボードの魅力をそう語る林陸翔さん(高校1年)だが、競技成績も折り紙付き。2020年には14歳という若さにして、全国3位に食い込んだ逸材だ。

 スノーボードを始めたのは小学1年の時だった。父親とともに爺ガ岳スキー場(大町市)へ足を運び、その後は各地を転々とする日々。3年になると、AZプロスノーボーディングスクールに入校した。当初は“姿勢が悪かったのを直すために”と通っていたが、5年時には日本スノーボード協会(JSBA)のバッジテストで1級に合格した。そこで競技者としての頭角を表すと、翌年にはJSBA全日本スノーボード テクニカル選手権大会の学生大会で上位に食い込み、全日本への切符をつかんだ。

 テクニカル選手権は、斜面を使ったカービングターンを主体としてスノーボードの総合滑走能力を競う大会だ。カテゴリーはアルパインとフリースタイルに分かれ、林さんはフリースタイルに出場。全日本大会では全6種目を競うが、「細かいところでだいぶ点数が変わってくる。それぞれのスタイルが滑りに出るので、みんな違って面白い」と声を弾ませる。

 中学では陸上部にも所属しながら、競技活動を本格化。オフシーズンには県外のサマーゲレンデに通ったり、スケートボードで感覚を養ったりと鍛錬を重ねた。「大会によって点数の出方が違うし、日によって調子が良い時も悪い時もある。最初はミスりまくっていました(笑)」。努力が実を結んだのは2年時。全日本大会のフリースタイル男子・フリーライディング種目で455得点をマークし、その種目の3位に輝いた。
 「誰もやらないようなことをやってギャラリーを沸かせたい」――豊かな表現力の根底にあるのは、普段ゲレンデで見せる遊び心だ。高校生となった今季は、同年代の仲間たちとチームを結成。自由自在を意味する“Freely”と名づけた。「みんなでわいわいと滑れるところが一番楽しい」。その姿をSNSで発信し、徐々に知名度も向上。「自分たちのことを見て誰かがカービングを始めて、それを見てまた誰かが始めて…。どんどんと広がってくれれば」と白い歯を見せる。

 今後については「色々なことに挑戦して滑りの幅を広げ、誰からも“かっこいい”と言ってもらえる選手になりたい。将来はデモンストレーターになってスノーボードの魅力を伝えていきたい」と意気込む。スノーボードはハーフパイプやスロープスタイルに注目が集まりがちだが、幅広い種目がある。高校1年のホープは、その奥深さを余すことなく発信していく。

取材/田中紘夢