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【活心術 峰丈流護身武道】伊那支部逆境に負けず生き抜く 「真の強さ」を培う

「お願いします!」。快活な挨拶とともに、道場に稽古生が集まる。身支度を整えると一人ずつ正座し、目をつぶる。「来たときのままの精神状態だと真剣に稽古に臨むことができない。まず座り、気持ちを切り替える」。そして定刻になると、「黙想」の掛け声と同時に、場内が張り詰めた空気で満たされる。「礼に始まり、礼に終わる」日本の伝統武道ならではの光景だ。
 茅野市に総本部を置く「活心術 峰丈流護身武道」。創始者・宗家は山田峰丈氏。長野県内はもちろん、北海道、東京、神奈川、山梨など、全国的にも広まる流派だ。「護身」と名がつく通り、目指すのは真に自分の身を守ること。精神力と肉体を鍛錬し、「自分が自分らしく生きるために、生き抜く強さ」を身につける。ここ伊那支部で指導にあたる木下兼秀師範も、「峰丈流」によって「自分らしく生きる道」を見出した一人だ。木下師範の願いは「大人になって社会に出ると、最初はだれでも新人からスタートする。何もわからず、その不安から嫌になり、立ち止まってしまう。そうではなく、自ら考えて行動し、成長できる人になってほしい」。稽古中も、技の指導を行うと必ず「自分でよく考えてやってごらん」と声をかける。その後、稽古生は真剣な面持ちで技の練習を繰り返す。上級生が下級生に教える姿、一人で技を磨く姿も。一人ひとりが自ら考え、それぞれに強さを極めていく。
 稽古で培った力を試すのは3カ月に一度の昇級・昇段審査と、組手や型で相手と競う大会。2023年11月、コロナ禍が明けて4年ぶりに開催された「第45回活心術 峰丈流護身武道空手道選手権大会 第9回全国空手道選手権大会」。出場するのは、各都道府県でベスト8に入った強者たち。伊那支部に通う稽古生たちも参加し、各々の力を発揮した。長野県予選で3位タイの成績を残した若林夏海は、「北海道勢の強さに圧倒された。次回は勝てるように力を磨きたい」。県予選でベスト8となり出場権を勝ち取った若林美波も「2回戦までは勝てたけど、3回戦で負けてしまった。次回はベスト4に入りたい」と気合が入る。
 木下師範いわく「大会に出ることが良い経験になる。強い相手と対戦し、あの選手に勝ちたいと思うことも向上心につながる」。
 近々行われる昇級・昇段審査に向け、自身の技を磨く稽古生たち。素足で冬の道場に立ちながらも、その表情は生き生きとし、寒さは一切感じさせない。そんな精神力と技の強さ、ブレない体。「心・技・体」の調和を目指し、日々の鍛錬に励む。


【若林 美波さん】
空手を始めたきっかけは、お母さんが勧めてくれたことと、テレビで見てカッコいいと思ったからです。練習をしていて、決まらなかった型が良くなったと声を掛けてもらったときに達成感を感じます。


【若林 夏海さん】
3歳から始めました。達成感があるのは、大会で対戦相手に勝てた時。11月の大会では、1回戦で負けてしまい、とても悔しかったので、次回は北海道勢にも勝てるよう、もっと強くなりたいです。

取材・撮影/児玉さつき