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【松本山雅FC】どん底から復調 上位への浮上をうかがう

 松本山雅FCが一時期の不振を脱し、じわりと浮上し始めた。第9節愛媛戦で敗れてクラブ史上初のJ2単独最下位と苦汁をなめたものの、そこから3連勝を飾るなど復調。勝ち点差の少ない中位争いの中から、さらに上へ抜けるべく奮闘を続けている。

 4月21日。山雅は監督交代直後の愛媛FCに1−3と完敗し、最下位に転落してしまった。副キャプテン前貴之は「情けない。もっとできると思っている選手がいる中で勝てないのは問題があるし、改善していくしかない。不甲斐ない試合をしてサポーターにも申し訳ない」と話していた。新型コロナの影響で降格がなかった昨季とは対照的に、今季は降格枠が4。ましてやJ1昇格を目指す山雅が、座視していて良いはずもなかった。

 ハードワーク。球際で戦い、切り替えを早く、最後まであきらめず、泥くさく戦う。チームは、従来の山雅が練り上げてきたスタイルを改めて共有。新加入の鈴木国友も「山雅が山雅らしくあるのは大前提。チームとしてここ数試合は本当にそれが薄れていたし、そこでまさっていたから今までの成績があるはず」と力を込めていた。

 果たして、次節以降は目覚ましいV字回復を見せた。ザスパクサツ群馬、ギラヴァンツ北九州、SC相模原を破って約3年ぶりの3連勝。そして首位・アルビレックス新潟との一戦は目を見張るパフォーマンスだった。結果こそ0−0に終わったものの、戦術がピタリとはまって選手たちも隙を見せずに遂行。相手のエース対策で大きな役割を果たした大野佑哉は「最低限の仕事ができた。守備は全体的に(柴田峡)監督もパーフェクトに近いと言ってくれた。これを自信にしてさらに積み上げて、まず守備が強い山雅をつくりたい」と声を弾ませた。

 その時点で開幕12試合無敗、かつ全試合でゴールを挙げている新潟をシャットアウトした。それだけでも素晴らしい成果だが、選手たちは決して満足していなかった。「僕らは首位相手にアウェイで引き分けてOKというチームではない。4連勝できなかった悔しさをしっかりと噛み締めて、また皆さんと一緒に泥くさく戦っていけたら」と村山智彦。その言葉は、どこまでも頼もしい。

 外山凌も「勝って当たり前くらいの気持ちでないといけない。勝者のメンタリティを持ってやっていきたい」と力強い。5月19日の時点で、5試合負けなし。陣形も3−4−2−1と3−5−2を柔軟に使い分けながら、激戦J2の中でたくましく勝ち点を積み重ねている。



取材/大枝令
写真提供/松本山雅FC