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過去最低14位 「AC長野らしさ」追求を

「過去最強のパルセイロをつくる。そのためにはワンチームになることが大切だけれど、簡単ではない。全員が意見をぶつけ合い、結束する〝真のワンチーム〟にならなければいけない」。1月の初練習でAC長野パルセイロを率いたシュタルフ悠紀前監督(39)はJ3参戦10年目に挑む強い決意を口にした。いま振り返ると、その言葉が激動のシーズンの全てを物語っていたように思えてならない。

 記録ずくめの歩みを振り返れば一目瞭然だろう。宿敵の松本山雅と激突した「信州ダービー」で15年ぶりの勝利を収め、序盤戦にJ3の首位を初めて2度経験。ここまでは確かに過去最強だった。しかし、そこから過去最多5失点での大敗やクラブワースト記録を更新する9戦連続未勝利(3分け6敗)があり、再浮上できないまま過去最低14位でフィニッシュした。

 チーム強化に直結する強化費でAC長野はJ3全体の中規模にとどまる。厳しい現実を踏まえ、2年目のシュタルフ前監督は失点リスクを減らして、少ない好機で仕留める「堅守速攻」を目指した。それが機能して松本山雅を打ち砕いたものの、ターニングポイントは第11節のアウェー沼津戦(5月)だった。
 守備の意識が強すぎて自陣に引きこもって敗れると、そこから9試合連続未勝利と急失速。ある主力選手は「首位に立ったサッカーなので、戦い方自体は間違っていなかったと思う。ただ、勝てなくなって自信を失ってプレーの質が落ちる選手もいたし、チームとしてもバラバラになりかけていた。勢いを持続させる力がなかった」と声を落とす。再起のきっかけをつかめないまま、第24節のアウェー奈良戦(8月)で0-2の完敗を喫してクラブは監督交代に踏み切った。

 新たに就任した高木理己監督(45)の掲げたスタイルは対照的だった。「J2昇格を狙うならば守備重視ではなく、リスクを冒す戦いを貫くしかない」と猛烈なハイプレスを仕掛け、一気にゴールに迫る戦いを徹底。特に最終戦となったホームでの宮崎戦(12月2日、2-2)は、1点ビハインドで迎えた後半からボランチ宮阪政樹を投入して流れを引き寄せた。ゲーム後に退団を発表した34歳は「3年間お世話になったサポーターに、パルセイロらしい『前へ』の姿勢を見せたかった」と鋭い縦パスで味方を鼓舞。すると、後半21分に同じくチームを去る32歳のFW山本大貴が「契約満了後は妻が毎日、泣いて悔しがってくれた。その思いを込めた」と、一時逆転となる意地のゴールを決めてスタジアムを沸かせた。

 ラスト6試合を3勝3分けの負けなしで駆け抜けた高木監督は「選手たちは、チームの根幹となる〝背骨〟のようなプレーは表現してくれた。それを信じてアクションを取り続け、上乗せできれば、より強い『長野らしさ』を構築していける」と強調。J2から金沢と大宮が降格する来季は、資金力や戦力でさらに厳しい戦いが待ち受けるだろう。AC長野らしさとは何か―。熾烈なJ3を最後までタフに戦い抜けるだけの〝答え〟を示せなければ、クラブの歴史に新たな1ページを刻むことはできない。