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【アルペンスキー:澤村玲奈】長野県から世界へ 未来へ続くシュプール

 生まれ育った長野県から世界へ——。「県内の難しいコースでの経験や、強いライバルたちのおかげで成長できた。これからも地元長野から世界を目指し、お世話になった地域への恩返しがしたい」。15歳のアルペンスキーヤー・澤村玲奈は力強い決意を口にする。
 明善中3年時の昨年2月、第60回全国中学校スキー大会の大回転で優勝、回転で準優勝。U16日本代表で出場した第31回アジアチルドレンアルペンスキー選手権で大回転・回転ともに優勝し、さらに県代表として出場したフランス・バルディゼール国際大会ではU16日本選手派遣史上最高位となる回転2位入賞を果たすなど大きく飛躍を遂げた。

 今年4月に松商学園高へ進学。「県内にはレースの行われるスキー場も多く、恵まれた環境。県の強化指定選手として専門的なトレーニングの機会もいただいているので、『長野県の選手』として活躍することで恩返しがしたい」。県外のスキー強豪校へという選択肢もある中で、地元での進学を選んだ理由をそう語る。
 オフトレーニング環境の充実や、競技活動への理解を示してもらえたことも決め手だった。スキー部がないため、部活動はウエイトリフティング部と陸上部に所属。日々トレーニングを積みながら、オフシーズンに緊張感を失わないよう各競技大会にも出場。ウエイトリフティングでは北信越大会まで出場。陸上では長野県大会の女子800mで6位入賞を果たし周囲を驚かせた。トレーニングセンターなど充実の環境に加え、シーズン中は長期遠征や大会出場などの競技活動に対する学校側の理解と応援も心強い。「笑って送り出してもらえるよう、結果で応えたい」と意気込む。
 無駄のない滑りでミスが少なく、完走率が高いことを武器とする。昨シーズンは22レースに出場し、途中棄権は1度のみ。60ターン以上に耐えうる体幹はオフトレーニングのたまもので、目標は「美しく・強く・速い滑り」。ただ速いだけではない、「見ている人がワクワクするような滑りを」と、フォームの美しさや力強さにもこだわる。練習でのストイックさを、所属する白馬五竜レーシングアカデミーの太田亘コーチは「納得いくまで滑り続けるので怪我をする前に止めないといけない」と苦笑する。

 愛着あるアカデミーとホームゲレンデの存在も地元に残った大きな理由だ。3歳で初めてスキー板を履き、父と一緒に滑り始めた白馬五竜のコース。松本から決して近くない距離を「じっくり集中できる環境がありがたい」と、1時間以上かけて通い続けている。
 「所属チームのコーチをはじめ、県のコーチ、サポートメーカーの方々に整骨院の先生、両親や周りの方々の応援やサポートがあるからこそ、今の自分がいる」と周囲への感謝も忘れない。
 初めての大会は、4歳で父と出場した親子ポール大会。最年少でもらった「特別賞がうれしかった」と懐かしそうに語る。その後、「もっと速く、かっこよく滑りたい」と競技に熱中していった。今も膨らむその気持ちを原動力に、目標に向かって日々努力を積み重ね、「もっと成長していきたい」と目を輝かせ、「近い将来、日本代表に定着し、日本人初のオリンピックとW杯優勝が目標」と語る澤村。ひたむきに前を見つめ、自分だけのシュプールを描く。


Profile:
澤村 玲奈(さわむら れいな)
2008年3月17日生まれ。松本市出身。松商学園高校1年。父の影響で3歳からスキーを始め、小学3年頃から本格的にアルペンスキーに取り組む。昨シーズンは全中優勝をはじめ、韓国アジアチルドレン大会優勝、フランス・バルディゼール国際大会入賞と国際大会でも活躍。全日本アルペンユース強化指定選手。SAJポイント年代別ランキング1位。「美しく・強く・速い滑り」を追求し、長野県から世界の頂点を目指して活動中。

取材/佐藤春香