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試行錯誤の前半戦 個性を生かすスタイル

AC長野パルセイロはJ3リーグ前半戦を7位で折り返した。シュタルフ悠紀リヒャルト監督体制での1年目。戦術やシステムの最適解を模索しながら、チームは日々成長を遂げている。
 序盤戦は4―3―3を軸に、サイドの幅を生かした攻撃を披露。森川裕基やデュークカルロスの突破力を押し出し、7試合を終えて4勝2分1敗と好スタートを切った。しかし第8節・アスルクラロ沼津戦で0-1と敗れると、そこから5試合勝ちなし。相手の対策が進み、サイド攻撃時に数的優位を作られる回数が多くなった。

 チームは第12節・愛媛FC戦からマイナーチェンジを図る。サイドハーフが中央寄りからスタートし、中盤の距離感を縮めることでパスのテンポを向上。ボールを失った後の即時奪回にも繋がった。
 また、開幕から3ボランチでアンカーを置く試合が多かったが、第13節・ヴァンラーレ八戸戦以降は5試合連続で4―2-3-1を継続。指揮官は「J3はあまり繋いでくるチームがない」と考察しており、ボランチを2枚置くことで、ロングボールを跳ね返した後の回収率を上げる狙いが見られた。それだけでなく「より後ろを気にせずにプレスに行けている感はある」と佐藤祐太。2列目がハイプレスを仕掛け、カウンターに繋げるシーンも少なくない。

 ボール保持時は、相手のセカンドライン(2列目)を超えた後が鍵となる。森川やデュークカルロスがスピードを上げ、数秒間で仕留めるのが理想だが、「今までの長野はそこが結構ゆっくりだった。その癖が抜けきっていない」とシュタルフ監督。中央にはフィジカルに長けた宮本拓弥や、裏への抜け出しが得意な山本大貴といったキャラクターもいる。デュークカルロスは「お互いにもっと話し合って精度を上げていきたい」と力を込める。

 幸いにも、ボランチには最高の組み立て役がいる。J1とJ2を渡り歩いてきたキックの名手・宮阪政樹だ。4―2―3―1に変更して以降の6 試合では、セットプレーやロングフィードで6得点に関与。アンカーでの起用時に比べてプレスを受けにくくなり、自由度が増しているように見える。
 個性豊かなライオンたちを生かすべく、シュタルフ長野はここまで試行錯誤を続けてきた。現体制1年目ということを踏まえれば、攻守ともに完成度は上々。とはいえ、強者ひしめく“J3戦国時代”を勝ち抜くにはまだまだ足りない。勝負の後半戦、アンダードッグの巻き返しに期待を寄せたい。

取材/田中紘夢