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【千田萌花:ゴルフ】憧れの舞台を目指して “チーム辻村”で腕磨く

夢への階段を一歩ずつ踏みしめる。塩尻市出身の女子ゴルファー・千田萌花。中学卒業とともに拠点を関東地方に移し、高名なプロコーチに師事して実力を伸ばしてきた。JLPGAプロテストを通過しての活躍を目標としており、「大きな舞台に立って影響力を持てるようになって、長野県の皆さんにもゴルフの楽しさを伝えたい」と力を込める。
 願いはかなえるためにある。象徴的なのは、高校の進路を決める際の決断だ。5歳からゴルフを始め、幼少時から上田桃子に強く憧れていたという。上田を指導する辻村明志コーチに教えを仰ごうとし、手を尽くした。まずSNSを通じて連絡を試みたが返信は来ない。その後は千葉県内の拠点まで直接赴き、置き手紙を託すなどして熱意を伝えた。
 それが実った。「何の実績もない無名の選手だったのに、突然連絡をいただいた。びっくりした」。ゴルフを追求する大きな分岐点だった。高校は通信制の強豪校・代々木に進学して千葉県内に住み、トレーニングに打ち込む日々。並行してゴルフ部の活動でも、全国トップレベルの力を持つ先輩ゴルファーから刺激を受けた。
 当初、辻村コーチのレッスンは月1回ほどの頻度。熱心な指導を受け、ショットの飛距離や精度などが格段に伸びたという。現在はドライバーで約240〜250ヤード。「(高校の)3年間で本当にショット力には自信がついた。辻村さんの影響だと思う」とうなずく。
 卒業後もゴルフ一本に絞り、引き続き辻村コーチに師事。そして2021年、二つ目の大きな転機が訪れる。プロテストだ。当時は自身2回目の挑戦で、2年連続で最終テストまで進んでいた。4ラウンドの合計で争う形式。2日目にトップタイの67をマークするなど、合格圏内をキープしていた。
 しかし最終日の後半、最初のティーショットから崩れた。第4ラウンドは77の+5。合格ラインまで4打差だった。「行けると思っていたし合格しか見ていなかったけど、結果的にただ崩れた。まだ未熟で、メンタル(の原因)が大きかったと思う。自分でも本当にびっくりするくらい、心の底から『悔しい』という感情が初めて出た」。狭き門を突破する決意が、改めて固まった。
 そのためには日常の蓄積が全てだ。“チーム辻村”では、上田や吉田優利などと同門。トッププロとの交流を通じて、「最低限やる」という思考法を学んだ。心身の状態に伴って調子が上下しても、その状況での100%を出すこと。「全部の力を毎日出し続けるのはトップ選手でも難しい。悪い状況でもどれだけのパフォーマンスができるかを考えるようになった」と説明する。
 そのマインドセットがプレーに安定をもたらし、ひいては大一番での結果にもつながっていく。2022年にはブリヂストンオープンとフジサンケイクラシック、昨年は日本女子オープンに出場した。プロテストはあくまで通過点。ハイレベルな環境に自然と目線も高まり、「以前は国内のツアーで満足だったけど、今は違う。世界で活躍する選手になりたい」と千田。身近な先輩の背中を追い、信州発のトップランナーとして咲き誇る決意だ。


Profile千田 萌花(ちだ・もえか)
ゴルファー
2002年11月22日生まれ、長野県塩尻市出身。5歳の時に父親の影響でゴルフを始める。丘中卒業後は代々木高(東京)に進学。同時に辻村明志コーチに教えを仰ぐようになった。卒業後も引き続き師事。ブリヂストンオープン、フジサンケイクラシック、日本女子オープンなどに出場した。151cmながらショットに自信を持つ。ベストスコアは67。

取材/大枝令