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【佐久長聖高校 駅伝部】刺激し合って信じ合って 大会新の圧巻レースで全国制覇

個々の力を高め合い、信頼のたすきを頂まで繋いだ。第74回全国高等学校駅伝競走大会(昨年12月24日、京都府)で、佐久長聖高等学校駅伝部は2時間1分0秒の大会新記録を樹立して6年ぶり3度目の優勝。県大会26連覇中の絶対王者が、都大路でも輝きを放った。
 前回大会は日本高校記録を塗り替えたものの、優勝を倉敷(岡山)に譲った。今回は「優勝」を掲げつつ記録更新も見据え、大会直前の記録会では登録選手のうち6人が5000mで13分台をマーク。「大きな自信になった。その結果として多くの人から期待の声をいただいたことも強い気持ちに繋がった」と永原颯磨主将はうなずく。
 「一人一人がどういう走りをするのか明確なイメージを持てていた」とし、「どの区間も不安要素がなく、全員が頼もしかった」と永原。自身は最長10kmの1区を任され、「流れを作るために非常に重要な区間。後のチームメイトに楽をしてもらえるように」と臨んだ。区間4位という結果には満足しなかったが、「意識していたライバル校たちに差をつけ、最低限の役割は果たせた」と振り返った。
 3区で副主将の山口竣平が先頭に立った。永原は「1年生の頃から一緒に全国大会を経験してきたので、良きチームメイトであり負けられない存在」と信頼を口にする。8.1075kmと長く上りの多いコースで、各校のエースが名を連ねる重要な区間。中でも14人抜きを果たした倉敷のサムエル・キバティに22秒差と迫られたが、譲らず逃げ切った。
 「山口は単独走が非常に得意。まとまって走る1区より3区のほうが適していた」と高見沢勝監督は采配を明かす。「4区以降にも自信を持っていたので、自分たちの走りを追求するだけだった」という永原の言葉通り、その後も最終7区までトップを譲らずゴールテープを切った。
 昨季は絶対的エース吉岡大翔の存在がチームをまとめたが、今季は「自分が走りたい」という気持ちが全員からにじんでいた。誰かが良いタイムを出せば「追いつきたい」という思いで切磋琢磨する雰囲気がひときわ強かったという。部員35人は歴代最高人数。「一人一人の個性が強い中で、寮生活を通して意見が飛び交う活発なチームだった」と永原は語る。
 「走り以外の生活もおろそかにせず突き詰めていくことが競技にも生きてくる」と話すのは、2年生の佐々木哲。「何としても走ってやる」という強い気持ちで練習を重ね、「持ち味のスピードを生かしたい」と5区を志願。8分14秒のタイムで51年ぶりに区間新記録を更新した。「強い人が『なぜ強いのか』を寮生活で日々意識するので、刺激になっている」と力を込める。
 就任13年目となる高見沢監督は「非常によくやってくれた」と選手たちをねぎらい、「ここで終わるのではなく、この先に活躍するためのステップにしてほしい。この結果に満足せず、さらなる飛躍を見せてほしい」と願いを語った。


【佐久長聖高校駅伝部】
1998年に長野県大会を初制覇し、同年第49回全国高校駅伝大会で4位入賞。以来26回連続出場中。2008年の第59回大会、17年の第68回大会、23年の第74回大会と3度全国優勝。22年には日本高校最高記録の2時間1分27秒を樹立、23年には2時間1分0秒と更新。OBは箱根駅伝やニューイヤー駅伝をはじめオリンピックでも活躍を見せ、12年ロンドン五輪代表の佐藤悠基、20年東京五輪代表の大迫傑、駒澤大学所属の鈴木芽吹らを輩出。

取材/佐藤春香