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好調から一転、急失速 切磋琢磨を取り戻せ

ライバルの松本山雅を倒して15年ぶりにつかんだ「信州ダービー」の勝利、初めてシーズン中に2度立った首位の座…。大小の歴史の針を動かしながら悲願のJ3優勝とJ2昇格にまい進していたAC長野パルセイロ。ところが、第11節(5月28日)からクラブ史上初の4連敗を喫し、最大の危機が訪れている。

 不振の芽は、皮肉にも最高のパフォーマンスを発揮した第10節(長野Uスタジアム)の松本山雅戦にあった。組織力と高い強度で圧倒して2-1で競り勝ち、スタジアムは歓喜に包まれた。その時、AC長野のベンチで大粒の涙を流す選手の姿が。前半途中で腰を強打して無念の交代となったFW進昂平だった。「チームの仲間が戦って勝ってくれた感動、そして『腰のけがで当分プレーできないかも』という悔しさ…。いろいろな思いが重なった」と胸の内を明かす。

 激闘の代償は大きかった。チームトップタイ4得点(第14節終了時点)をマークしていた進の故障離脱だけでなく、中盤の〝潤滑油〟としてチームを支えた佐藤も離脱。主力2人が抜けたことで歯車が狂い始めた。

 第11節の沼津戦(0-1)は、パスワークに優れた相手を「少しリスペクトしすぎてしまった。分析した情報も選手にうまく伝えられなかった」(シュタルフ悠紀監督)と自陣で守備に奔走。続く第12節のFC大阪戦(0―1)は、相手のペースに乱されてロングボールを蹴る淡泊な攻めを繰り返した。DF船橋勇真は「もう少しパスでつないでも良かった。信州ダービー以降は、その部分(攻撃)が落ち着かない」と吐露。堅守速攻をベースに、相手が守備を固めれば磨いてきたパスワークで崩す―。自信を持っていた「これが俺たちの戦い」という〝らしさ〟が霧散していた。

 復活のヒントが垣間見えたのは、天皇杯全日本選手権2回戦(6月14日)のJ1神戸戦だ。格上に真っ向勝負を挑んで1-3と善戦し、シュタルフ監督は「日常(練習)から、この試合のような強度の高いプレーやファイティングスピリットを出して仲間同士で戦うことができれば週末のゲームは楽に戦えるはず」と強調。今季序盤に生まれていた激しいチーム内競争こそが「堅守猛攻」のスタイルを取り戻すための重要な鍵だった。

 とはいえ、すぐに不振から抜け出せるほど現実は甘くない。迎えた第14節の鹿児島戦は一進一退の攻防を繰り広げたが、安易なミスから先制点を献上。後半にMF安東輝のミドルシュートで追いついたが、終盤に勝ち越されて悪い流れを断ち切れなかった。

 「結果が出るまで、しつこくネバーギブアップし続けたい」とシュタルフ監督。今季のJ3は大混戦だけに、輝きを取り戻せれば再び上位争いに名乗りを上げられる。俺は今日の練習で成長できた―と胸を張って言える選手がどれだけいるか。足踏みは続くが、日々の練習の一歩を変えることで、シーズン最後の姿は変わってくる。