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再浮上のために 「勝負強さ」を追求

苦闘が続いている。松本山雅FCは6月13日のSC相模原戦に勝って3連勝としたものの、以降は1分3敗と4試合勝ちなし。前半戦残り1試合となる第18節を終えた段階で、首位まで勝点10差の10位と苦境に立たされてしまった。課題に浮上している「勝負強さ」を日々の練習から求めながら、再浮上へのきっかけをうかがう。


 攻撃面では数字が出ている。ほとんどの試合でゴールは奪えており、総得点はリーグ1位タイの30(第18節終了時点)。ゴールから逆算し、長短のボールを使いながら相手の嫌がるエリアを攻略していく。霜田正浩監督が手ほどきするこうした仕組みがチームに浸透し、再現性を獲得できている証拠と言えるだろう。
 その中で、小松蓮はリーグ得点ランキング首位をひた走る活躍。FWに点を取らせる手法の中で、フィニッシャーとして不可欠な存在感を放っている。6月のEPSON月間MVPも受賞。一時はゴールから遠ざかっており「苦しい時を救えるストライカーになりたいと思っているし、チームとして乗り越えるべき壁ができた」と語っていたものの、第18節福島ユナイテッドFC戦では開始早々に豪快なヘッドを決めた。

 ただ、その試合も結局は2失点して逆転負け。いずれもセットプレーからだった。さらにその前の第17節FC琉球戦も、1-0の84分からFKなどで2失点。得点以上に試合終盤の失点が立て続いており、それが勝点を失う要因に直結している。キャプテン安東輝は「勝負弱いし、ゴール前での粘り強さが足りない。それは僕たちもわかっていて、課題としてトレーニングで取り組んでいる」と話す。

 今季はもともとプレーモデルの落とし込みなどを優先してきた。その中で1対1のデュエルや球際へのこだわりを取り戻す必要性を感じ、そうしたメニューも取り入れながら勝ち切るしたたかさを植え付けようとしてきた。ただ、「少しやったからといって厳しいゲームの中で発揮できるわけではない」と安東。取り組みはこれからも続く。
 2018年にJ2を制覇した当時などを含め、従来の山雅はそうした「勝負強さ」が根底に流れていた。練習から細部を突き詰め、その集積として極めて隙の少ないチームとして練り上げられていた。当時を知る選手は安東のほか村山智彦、橋内優也、パウリーニョ、下川陽太の5人。下川は「当時のことをみんなにプレーや言動で見せられるような存在にならないと」と力を込める。

 クラブの記憶を繋ぎ、新しいスタイルの中に織り込む。地道な作業を続けて進化を遂げながら、苦境を乗り越えていく構えだ。

取材/大枝令