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【木曽青峰高校相撲部】全国へと踏み込む一歩 晴れ舞台での躍進を目指す

地域の伝統を背に、2年ぶりに全国の土俵へ踏み込む。木曽青峰高校相撲部は県高校総体(6月11日、長野市南長野運動公園相撲場)の団体を制し、インターハイの出場権を獲得。8月4〜6日に北海道で開かれるひのき舞台を見据え、佐々木英人主将は「県を背負うのは緊張する。重圧もあるが、出るからには一戦一戦に集中して楽しみたい」と力を込める。

 部員は9人。個人でも出場権を得た伊藤凜空と中谷良典、個人100kg級の佐々木ら5人でチームを構成する。佐々木と2年生の伊藤は押し相撲の強さを武器としており、団体でも軸として期待がかかる。吉本斗羽は低い姿勢からの攻めが持ち味。中谷は100kg超の体格を生かして前へ。原直仁はリーチが長く、四つ相撲や諸手差しから白星を狙っていく。就任10年目の植村健監督は「みんな地力がついてきている」と手応えを口にする。

 相撲が盛んな木曽地方。幼い頃から地域で相撲に親しんできた選手が多く、互いに顔見知りで関係性も深い。だからこそ学年に関係なく気兼ねなくコミュニケーションを取れるといい、「先輩後輩の垣根を超えて、互いにアドバイスし合って切磋琢磨できる」と佐々木主将。国技ならではの伝統は重んじながらも、風通し良い環境で稽古に励む。

 出場2校の県総体では、5人戦に対して更級農が3人だったため、木曽青峰は1勝すれば優勝する状況だった。「2点分のアドバンテージはあるが、何が起こるかはわからない」と指揮官。先鋒は不戦勝で、次鋒で伊藤が竹内恵と対戦した。後日の個人を制した実力者・竹内を次鋒に当てるオーダーに不意を突かれたものの、伊藤が寄り切って全国切符をつかんだ。
 どんな相手にも相撲が取れるよう、総体目前の現在は「当たり」と「踏み込み」に重点を置く。先手を取って攻める戦法で、植村監督は「まず相手の出足を止める立ち合いが大事」と説明。佐々木主将は「前に出る練習には力が入っている」とうなずく。

「相撲のまち」木曽町に位置し、御嶽海を輩出した同校。1978年のやまびこ国体も追い風として地域に根差し、現在は木曽郡内や近隣市町村から選手たちが門を叩く。正門の目と鼻の先には2019年に学校統合10周年を記念して同窓会が寄贈した道場が構えられており、選手たちが日々の稽古に汗を流す。
 恵まれた環境で力を蓄え、いざ全国へ。「コロナ禍で相撲を辞めるか迷ったこともあったが、『ここでくさってはいけない』と続けてきた。総体では一戦一戦を大切に自分の相撲を取り切って、ベスト32の壁を超えたい」と佐々木主将。郷土の後押しを背中に受けながら、晴れの土俵で躍動を誓う。


【植村 健 監督】
自分の意志で「強くなりたい」と思って取り組まないと上達はない。そういう気持ちにさせる指導を工夫しています。彼らの人生を支えていくくらいの広い視野で、長い目で見て声をかけています。

【佐々木 英人 主将】
厳しい指導は自分達のためなので、すごくありがたいことだと思っています。全国に向けて、自分より大きい相手に対しても引けを取らずに立ち回れるよう、気持ちの面でも強い相撲を目指します。

取材・撮影/佐藤春香