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ロングスパート 光の射す方へ

一条の光を求めて、ひたむきに歩みを進めていく。松本山雅FC はシーズン後半戦から勝ち星が遠く、第22節を終えた状態でJ2昇格圏内2位まで勝点差11と苦境にあった。だが第23節・鹿児島ユナイテッドFC戦で2-0の快勝。上位陣を凌駕するだけの力を証明し、息を吹き返した。
 「本当に『勝ちたい』という気持ちをプレーの随所に見せてくれたし、本当に魂のこもった試合をしてくれた。こういう試合をして勝点3を取ることを僕らは今年ずっと目指してきた。これに慢心することなく、今日だけではなく次も続けていきたい」。霜田正浩監督は試合後の記者会見で、上ずった声でそう力を込めた。

 「いい内容」を「結果」に結び付けることが最大のミッションだった。第20節・愛媛FC戦は首位の相手に90分間ほとんど何もやらせないほど圧倒的な内容だったにもかかわらず、終盤の失点に泣いて1-1のドロー。続くガイナーレ鳥取戦も前半に2失点して状況を苦しくすると、2位のカターレ富山を迎えた第22節も終始優位にゲームを進めながらミスからのカウンターで沈んだ。いくら内容が素晴らしくても、サッカーはスコアを競うスポーツ。もどかしい足踏みが続いていた。
 「今年は良い内容の試合が多いけど、結果がついてこないと『優勝する」という目標を達成するのは厳しくなってしまう。こういう試合でどこかで勝ち切るクセというか、一つ壁を超えていかないと」。若きDFリーダー常田克人はそう言って危機感を募らせた。
 あとがない状態で迎えた鹿児島戦。この夏の酷暑下で遠距離アウェイ、しかも鹿児島には過去3戦全敗という相性の悪さもあった。しかし山雅は、目を見張るようなパフォーマンスを示し、それを肝心の「結果」にまで昇華させた。プレスにひるまずボールを動かし、13分には米原秀亮のロングパスから藤谷壮がカットインして左足シュート。プロ9年目で初ゴールを奪った。

 後半にはCKの2次攻撃で下川陽太がドリブルで仕掛け、PKを獲得。これをエース小松蓮が決めて追加点を奪った。小松はリーグ得点ランキングを独走する15点目。「勝てる試合をここまで落としてきた。そこも含めて、ああいうPKで追加点を取れたのは大きかった」と小松。直近の数試合で本来のパフォーマンスを出せずにいた左右サイドバックの藤谷と下川が、殻を破るようなプレーで結果を出したのも大きな好材料だった。

 この一戦で連敗を止め、確固たる自信を手に入れた松本山雅。あとはこのパフォーマンスを継続して、残り15試合でありったけの白星をかき集めるのみ。まずは無失点に拘りながら、自慢の攻撃力で目の前の敵を打ち倒していく。

取材/大枝令