パラスポーツ

パラスポの魅力を発信!部員は全員健常者 信大車いすバスケ部「SEROWS」

 パラスポーツは障がい者がやるもの――そう思われる方も少なくないのではないか。信州大学には、部員全員が健常者の車いすバスケットボール部「SEROWS」がある。2006年に結成され、12年には正式な部活動として承認。16年に全国車いすバスケットボール大学選手権で優勝するなど、学内唯一のパラスポーツチームとして精力的に活動してきた。
 前主将の4年・望月樹也(もちづきたつや)は、小中とサッカー、高校ではハンドボールに打ち込んで信州大へ進学。新歓期にSEROWSと出会った。バスケットボールの経験はなかったが、進学を機に「新しいことを始めたかった」と言う。
 障がい者や車いす、パラスポーツとは無縁の環境で生きてきた。それでも、当時から健常者の部員が大半を占めていただけに、競技に対する偏見はなかった。最初は難易度の壁にもぶつかったが、徐々にのめり込む日々。純粋にスポーツとして仲間と楽しんでいた。
 「『なぜ車いすバスケなのか』と聞かれることも多いが、僕としては最初から、パラスポーツは障がい者がやるものというイメージはない。みんなが野球やサッカーを楽しむように、一つのスポーツとして楽しんでいる」
 コーチを務める奥原明男(高校2年で脊髄損傷)や、障がいを持つ先輩と関わる中で変化もあった。練習場の多目的トイレやスロープの有無を気にかけるようになり、バリアフリーへの理解が深まった。一方で、コート上では「障がいを持っていても、長年やっている方には手も足も出ない」と舌を巻く。
 東京パラリンピックでは、日本代表が銀メダルを獲得した。「パラリンピックが東京で行われることが決まってから、体験会で講師をする機会もあった。徐々に盛り上がりを感じる中で、日本代表の活躍が見られて本当にうれしい」と望月。2019年には車いすバスケ漫画「リアル」が約4年半ぶりに連載を再開するなど、近年は追い風が吹いている。
 SEROWSは9月、全国車いすバスケットボール大学選手権で優勝。4年生は有終の美を飾った。卒業後について、望月は「体験会の講師やレフェリーとして競技を支えながら、自分がプレーしている姿を日常的に発信したい。どうしても障がい者がやるスポーツだと捉えられがちだが、僕が社会人になっても続けていけば、その価値観が変わっていくと思う」と意気込んでいる。
 2028年には、全国障害者スポーツ大会が長野県で開催される。今夏にパラリンピックで得た熱量を、7年後まで繋げたいところだ。
<取材・撮影/田中紘夢>