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タフにピッチを奔走し 「反撃の秋」へ一丸

秋は収穫の季節だ。
 松本山雅FCにとっても、同じことが当てはまる。21試合を終えた時点で12勝5分4敗(勝ち点41)の3位。首位いわきFCとは4、2位鹿児島ユナイテッドFCには3の勝ち点差となっている。最低でも2チームのどちらかをかわさなければ、目標としている1年でのJ2復帰は果たせない。
 そもそも3位に甘んじている要因は、上位との直接対決で思うような結果を残せなかったのが大きい。新型コロナの影響で離脱者が相次ぎ、いわきとの試合は延期を余儀なくされた。2週間空いて迎えたヴァンラーレ八戸戦で敗れると、日程変更後に行われたいわき戦はスコアレスドローがやっと。続くアウェイ・鹿児島戦は2-4と今季最多失点を喫した。
 この時点で3試合勝ちなし。首位に立つ機会を2度にわたって取り逃しただけでなく、ダメージの残りかねない黒星を喫した。MF下川陽太は「直接対決を落としてしまって、ここからは(相手の)順位が下位だとかは関係なく負けられない戦いが続く。その意味ではもう勝ち続けないと僕たちの先はない」と語っていた。

 だが、ここから力強く再起する。続くギラヴァンツ北九州戦。名波浩監督はロッカールームのホワイトボードに「崩壊した守備を立て直そう」と書いてチームに活を入れた。暑さが残るアウェイでの戦いだったが、選手たちは最後までピッチを奔走。MF外山凌が「オフ明けの走りなどのトレーニングの成果が徐々に数字になって表れてきて、それも自信になっている」という通り、最後まで脚を止めずにセットプレーの1点を守り切った。

 最終ラインから守備を統率する大野佑哉も「一緒に出ていたトキ(常田克人)とノノ(野々村鷹人)とも試合前に『ゼロの時間を長くして、攻撃陣を信じてガマンしよう』と話をしていた。」と振り返る。

 そして特筆すべきは、猛威を振るう2トップ。U-19日本代表の横山歩夢と、191センチのブラジル人FWルカオだ。適切な距離感でコンビネーションを繰り出したり単独で突破したりと、疾風迅雷のスピードで敵陣を攻略。ルカオは「100%に近付いている実感があるし、自分も自分のプレーに対してワクワクしている」と頼もしい。

 こうして攻守に躍動感を出せたのは、キャンプからトレーニングを積み重ねて立ち返るべき原点があるからだ。「練習の量や強度はJ3で1位だ――と、名波さんも言っていた。厳しい練習をしてきて、自信を持っている」と常田。蒸し暑い九州アウェイの2試合でも走り負けせず、勝負の秋へ。ひたすら白星をかき集め、昇格戦線に食らい付いていく。

取材/大枝令