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【長野東高校水泳部】復活の水球チーム 全国を経てたくましく

長野東高の水泳部には、県内の高校で唯一の水球チームがある。復活2年目の昨季は、同校で行われたインターハイに開催地枠として出場。初戦で新潟産業大附属に敗れたが、今後につながる貴重な経験を積んだ。

 かつて存在した水球チーム。1976年には開催地枠でインターハイに出場したものの、のちに人数の少なさから廃止となった。OBの堀知幸監督は「自分がやっていたものがなくなったのは切なかった」と振り返る。それから数十年が経ち、2020年に自身の手でチームを復活。2021年のインターハイ開催に向けて「長野県内に1チームは作らなければいけないと思っていた」。

 立ち上げ当初のメンバーは、競泳チームからの助っ人を除くと1年生3人のみ。基礎練習がほとんどで、試合の経験も思うように積めなかった。その一人である吉田大佑主将は、中学までサッカーをしていたが、高校から水球に転向。「何か新しいことをやろうと思っていて、インターハイに出場できるという特典に惹かれて入った」と経緯を明かす。とはいえ「泳ぎも手でボールを扱うこともやってこなかったので、かなり難しかった」。右も左も分からない世界に飛び込み、試行錯誤の日々が続いた。


 そして迎えた全国の舞台。初戦で新潟産業大学附属に2-27と敗れた。長野東は全員が初心者で、「テクニックや泳力の差が出た」と堀監督は言う。それでも「1試合1試合相手から良いところを盗もうと思うようになった」と吉田。トップレベルを経験したことで、少なからず意識の変化があったようだ。

 現在は選手9人、マネージャー1人で活動。5月には東京五輪に出場した志賀光明氏を招き、基礎から見直した。指揮官いわく、数週間後の試合で早くもその成果が表れたという。今季の総体は北信越大会からの出場。厳しい戦いが予想されるが、「今までより相手に食らい付けたら」と吉田は意気込む。県代表の誇りを胸に、少しでも他県の強豪との差を埋められるだろうか。

 1期生である3年生にとって、今季は集大成。堀監督は「去年の全国が終わった後も抜けずに続けてくれた。入部当時の写真と見比べると、しっかりと筋肉がついている」と目を細める。全国的に見れば小さな成長かもしれないが、チームにとっては大きな進歩。復活したチームの礎となり、道を切り拓いていく。

取材・撮影/田中紘夢