高校スポーツ

【松商学園高校女子バレーボール部】一人一人がチームを作る 受け継がれる姿勢

「選手たちの姿を見て、『この先輩たちと一緒にやりたい』という後輩が入ってきてくれる。全員が『ここでやりたい』という気持ちを持っている」。指導歴6年目の藤森圭監督は、松商学園高女子バレー部の強みを語る。春の高校バレー全国出場回数は県内最多の16回。強豪であり続けられる理由は、単に競技力だけによるものではない。

 「生活とバレーボールの線引きをしない」とうたい、人間力を養うことが勝利に結び付く――というのが部活動の理念。日常生活での礼儀や人との接し方といった社会に出るためのマナーは、技術以前の「基盤」として根付いている。練習前には全員で円陣を組み、声をそろえて体育館に一礼。誰に指導されるわけでもなく先輩から後輩へ自然と引き継がれる風習だといい、「先輩の姿を見て学ぶ」という姿勢からは、後輩が見習いたくなるような人間力が養われていることがうかがえる。
 主将の花岡亜矢は、「誰か一人がすごいわけではなく、皆で練習して作り上げていく環境。『全員でがんばろう』という意志がすごく強い」と、部員たちの団結力を強調する。全員が「ここでやりたい」と望んだ場所だからこそ、同じ方向を向いて切磋琢磨できる。「プレーに上下関係はなくして、みんな一緒」と学年に関係なく言い合える雰囲気に加え、体育館の壁に掲げられるのは「自分がやる」の一言。「コートの中にいる人もそうでない人も『自分がやる』という姿勢がチームを作っていった」と力を込める。
 男女の優勝校が「春高バレー」に出場する、第76回全日本高校選手権県大会。チームは11月12日のファイナルラウンドに進み、決勝で都市大塩尻と対戦した。2セットを連取されながら1セットを返したものの、第4セットは22-25とあと一歩及ばなかった。2017年を最後に全国から遠のいている松商学園にとって、18年から連覇を重ねる都市大塩尻は常に意識する相手。とはいえ藤森監督は「同じ県内の決勝で戦えることには、プレッシャーにも勝る喜びがある」と話す。
「勝つことを目的にしてはいるが、追い付くまでに自分たちがどう成長できるか」と指揮官はうなずき、「勝たなきゃいけないという意識はせずに伸び伸びとプレーして、会場の雰囲気をいい意味で裏切るようなプレーをしていきたい」と語る。花岡も「都市大さんを倒すことを目標に上を目指してきたからこそ、他の試合でも勝てたと思う」と口をそろえた。
志を同じくして集まった仲間たち。一人一人が成長しながら背中を受け継いでいく姿が、また新たな仲間を惹きよせる。


【藤森 圭 監督】
子どもたちはもちろん、いろんなカテゴリの指導者の皆さんに応援されるチームになることを目標にしています。「教え子が松商に行って良かった」と喜んでくれる人が増えていけばうれしいです。


【花岡 亜矢 キャプテン】
今年のスローガンは「狂喜乱舞」。見ている人も思わず踊りたくなるような喜び方やプレーができるように、と決めました。全員が目標に向かって頑張る気持ちで、皆で一つのチームを作りあげました。

取材・撮影/佐藤春香