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【京都サンガF.C.麻田将吾】     幾多の試練を乗り越え 安曇野からJ1へ いざ、国内最高峰の舞台へ――

 12年ぶりのJ1参戦となる京都サンガF.C.で、安曇野市出身のセンターバック麻田将吾が気迫をみなぎらせている。プロ6年目の23歳で、昨季は38試合に出場して昇格に貢献。今季はユース時代の背番号「3」も託され、気持ち新たにキャンプインした。「本当に365日サッカーに集中し続けることが大事。『1年で降格したらどうしよう』じゃなくて楽しみな気持ちしかないので、この期待感を忘れずにシーズンを過ごしたい」と話している。

 昨季は苦難を乗り越えて花開いた。トップ昇格して以降の4年間のうち、2年間はカマタマーレ讃岐にレンタル移籍。戻った2020年も出場8試合にとどまっていた。「プロに入って試合に出られないことを初めて経験して、こんなにも苦しいものだと痛感した。ポジションをつかむのは難しいのに、失うのも一瞬だった」と振り返る。
 しかし、そこでも心折れなかったことで飛躍に結び付けた。その原動力は何か。「なんのために頑張るのか。もちろん自分自身のために頑張ることは大切だけど、誰かのためとかチームのために、自分じゃない誰かのために――と考えるとやる気が湧いてきた。それに、試合に出られない選手がどれだけ練習を頑張るかが全体のモチベーションにも繋がる」。内省を繰り返した末に結論を得て、迷いが消えた。
 そして曺貴裁監督が就任した昨季。攻守にアグレッシブなスタイルを徹底する指揮官のもと、主力として起用され続けた。リーグ最少の31失点。「今までは最後の一歩や詰めの甘さがあったけど、去年はスライディングしたり、一歩寄せて体を張ったりすることはチームとして徹底されていた。最後まで諦めないことも含め、当たり前のことを当たり前にやれた」という。高い遂行力を求める指揮官のもとで眼前の1試合に没頭し、気付けば24勝12分6敗(勝ち点84)の2位で昇格した。
 これまでのキャリアで、準備の重要性を学んだ。「試合は90分だけど、その前から勝敗に関わることは始まっている。キックオフして気持ちをつくって…とか悠長に構えていたら先手を取られてしまう。1週間かけて90分でマックスを出し続けるよう実践することが増えた」。準備を大切にするのは、開幕前も同様だ。キャンプ中の現在は「誰もポジションを約束されていない。緊張感がありながらも競争に勝つ意識で必死にやっている」と話す。


 逆境でも決してくさらず、チームのためにタフに戦い続ける。準備を怠らない。その姿勢を貫いてJ1に挑む今季。長野県出身者としては田中聡、原直生(湘南ベルマーレ)とともに3人だけのJ1所属選手となる。「久しぶりに京都でJ1の選手になれる。大げさかもしれないけど長野県の選手を引っ張って勇気付けられるように、『自分でもやれる』と思ってもらえるように頑張りたい」と意気込みを語る。

Profile 麻田将吾(あさだ・しょうご)

1998年7月6日生まれ、長野県安曇野市出身。
アルフット安曇野(現 FC AZUL)から京都サンガF.C.ユースへ進み、2017年にトップ昇格。身長186㎝、体重80㎏。

取材/大枝令
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