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逆襲の6月 どん底から這い上がる

失意の底から、力強く這い上がってきた。松本山雅FCは5月、宿敵AC長野パルセイロとの信州ダービーで15年ぶりに黒星。大きなショックから立ち直りたかった次節・鹿児島ユナイテッド戦も終盤に崩れて2-4と敗れた。直近のリーグ戦5試合で1勝4敗となり、順位は9位まで後退した。
 だが、そこから目覚ましい復活を遂げた。カギとなったのはディフェンス。まずは守備のルールを細部にわたって改めて言語化し、チーム内で意識を共有した。それに加えてトレーニングの内容もマイナーチェンジ。1対1など対人プレーが発生するルール設定としたり、クロス対応など守備に主眼を置いたりして改善を図った。

 それが一つの成果となったのは第13節・FC今治戦。強烈なアタッカーを擁する相手を的確に封じつつ、2ゴールを挙げて2-0で白星をつかんだ。4試合ぶりの無失点。ディフェンスリーダーの橋内優也は「みんなが身体を張れたからゼロで終われたのはすごく良かった。自分たちがそういう部分にこだわったトレーニングをすれば、失点を減らしていける」と手応えを口にした。

 さらに第14節・カマタマーレ讃岐戦。相手の攻め手を封じて優位に試合を進め、同じく2-0で3連勝とした。「最後の部分でのあらがい方は良い部分がすごく出てきた。あらがってあらがって最後にやられてしまったら本当にしょうがないけど、そういった部分で身体を張れていてすごく頼もしい。誰が出てもそれを表現できている」。最古参のGK村山智彦はそう振り返る。

 従来の山雅が示してきた守備のマインドを取り戻す一方、攻撃のトレーニングを積み上げてきたこともピッチで開花し始めている。14試合で27得点はリーグ最多。1試合平均2得点に達する勢いで、チームとして練り上げてきた仕組みが機能している。
 その中で開花の時を迎えているのが小松蓮だ。アカデミー出身のストライカーで、14節終了時点でリーグ得点ランキング首位を独走する12ゴール。讃岐戦でも追加点を挙げ、クラブ史上最長となるリーグ戦5試合連続ゴールとした。

 「チームのために何ができるかと考えたら、FWとしてはゴールを取ることが一番大事。いままで逃げる部分もあったし、『守備で頑張っているから』と言い聞かせることもあったけど、向き合うべきはゴールを取るためにどれだけやれるか」
 昨季までの悔しさなどをバネに一念発起し、24時間をサッカーのためだけにデザインしてストイックな日々を送る。その取り組みと霜田正浩監督の戦術が噛み合い、ゴールを量産。このほか村越凱光、菊井悠介、滝裕太など前線の選手たちが次々と得点を挙げており、チームの新たな姿を示そうとしている。

 それでもまだ、通過点にいる。3連勝となった讃岐戦後の記者会見で、「まだまだ課題は続く。次の試合に向けて僕らがやらなければいけないことはまだまだたくさんある」と霜田監督。白星を積み重ねながら、さらなる成長を遂げていく。

取材/大枝令