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指揮官の信念が浸透 成長示す3連勝

会社の上司と部下、部活の先輩と後輩…。なかなか結果や成績が出ずに自信を失っている人をどう成長に導くか。サッカーJ3のAC長野パルセイロの不振を受けて8月下旬から指揮を執る高木理己監督は我が子を諭すように粘り強く、時に熱く、時に厳しい言葉を選手たちに投げかけてきた。第32節まで4戦未勝利と苦しんだが、そこから目の覚めるような3連勝。チームはようやく成長した姿を見せた。
 第33節の沼津戦(3-0)からスタートした連勝を振り返ると、指揮官が就任後から繰り返し述べてきた言葉が勝利を引き寄せている。
 「大切なことはチームとして〝群れ〟で動くこと」
 「すぐにボールを下げるから低い順位にいるんだぞ」
 沼津戦はこの2つの言葉がポイントになった。2連敗中で崖っぷちの状況で臨んだAC長野はパスワークに優れた沼津に対し、まさに群れのような統率の取れた守備で対抗。前半12分に先制すると勝負を大きく決定づけたのは同35分の2点目。自陣の低い位置で相手と競り合ったDF杉井颯は安易なバックパスを選択せずに、大きく前に蹴り出した。最前線のFW山本大貴が粘ってボールを確保し、そこから一気にゴールへ。杉井は「勇気を持って前にボールを送る意識が持てるようになって得点につながった」とうなずく。
 「アイデアは自分で生み出すもの。他人から言われて出したものはアイデアじゃない」
第34節の讃岐戦(3-2)は2点ビハインドをひっくり返した。前半終了間際にMF三田尚希(木曽町出身)のゴールで1点を返すと、後半はシステムを変更。これに相手が動揺した隙を逃さない。後半3分に山本が左サイドでボールを奪うと、再び三田が動く。「裏に走ってボールが出てくればフィニッシュまで行けると思ったし、ボールが来なくても僕が走って空いたスペースを他の選手が生かせる」。息の合った連係で攻撃のアイデアを共有し、三田が抜け出して同点弾を決め、その勢いのまま今季初の逆転勝ちをつかんだ。
 「プレーを止めるな。最後まで走れば良いことがある」
第35節の鳥取戦(3-2)で魅せたのはMF小西陽向(長野市出身)だ。1点を追う後半2分、自陣の深い位置からのクリアボールを山本が回収して一気に敵陣へ。自陣のゴール前にいた小西はここから全力疾走して相手ゴール前に駆けた。「(ボールが)来てくれたらいいな、ぐらいの気持ちで走っていた。本当に来るとは思っていなかったけれど、うまく決められた」と左クロスに飛び込んで同点弾を決めて逆転への流れをつくった。
第36節の北九州戦(2-2)は勝ちきれずに今季初の4連勝は逃したが、高木監督は「選手たちが言われたり、やらされたりするのではなく、自分自身で(プレーの)決断を下せるようになってきたことが大きい」と確かな手応えを語る。今季もJ2昇格は逃したが、終盤戦に見せた成長物語に続きがあるのならば、来季こそ悲願が見えるかもしれない。