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【松本南リトルシニア】信州球界に新風を 「改革」と「結果」のシーズン

中学硬式野球の松本南リトルシニアが、躍進のシーズンを駆け抜けた。昨秋に地区予選初戦敗退という苦い結果に終わって以降、自分たちと向き合って成長。守備と機動力を生かした野球で全国2大会に出場し、全日本中学野球選手権大会ジャイアンツカップでは全国1勝もマークした。「信州の野球界に活力を」という思いからチーム運営の変革にも取り組み、一つの成果を残した。

 昨年10月。新人戦中南信ブロック予選で、松本南は伊那に0-2と完封負けを喫した。漆戸大晟主将は「悔しい思いをして、チームの中でも『このままじゃマズい』という危機感が生まれた」と振り返る。無得点に終わった打撃の改善を期し、それぞれが自主練習としてティーバッティングなどに打ち込んだ。
 従来から守備と走塁には手応えを持っていたチーム。竹内篤希と花澤玲希が試合をつくり、サイドスローの永原秀斗も要所で登板する。「テンポよく投げ込んでリズムを作るように意識してきた」という竹内は球速とキレが高まり、球種も増えるなど成長。遊撃手・漆戸を軸とした内野の堅い守りでロースコアゲームに持ち込んでいく。

 攻撃はリードオフマンの齋藤幹太がカギ。高い出塁率と50m走5秒台の俊足で好機を作り、3番漆戸と4番花澤で生還させるのを得点パターンとしていた。盗塁やエンドランだけでなく、常に進塁を狙う意識がチームに定着。1巡目で成功すれば優位に試合を運ぶことが可能となる。そこに打撃力が上積みされてスケールアップ。リトルシニア日本選手権と全日本中学野球選手権大会ジャイアンツカップという全国2大会の切符をつかんだ。2大会同時出場は2005年以来18年ぶりの快挙だった。
 「全国でも緊張せず、自分たちの力を前面に出していけたら」と話していた花澤。8月1日の日本選手権は初戦で戸塚(神奈川)に2-6と敗れたが、16日のジャイアンツカップはフレッシュ串木野ドリームズ(鹿児島)を1-0で下した。最終七回に1死無走者から2番清水陽真が左前打で出塁する。4番花澤が敬遠されて迎えた2死一、二塁、小野勘太が中前に適時打を放って先制。守っては竹内-永原が被安打2の完封リレーとした。
 「『うまくなりたい』という思いが強い子どもたちで、逆に私たち指導者もスイッチを入れさせてもらった」。チームに携わって20年目の塚原啓介監督はそう振り返る。今季は野球人口の減少などを憂い、野球界の慣例であった保護者当番制の大幅削減をするなど運営の改革に着手した。「全ては選手ファーストで、いずれは保護者は送迎のみにしたい。保護者会でも、まず3年生の親が入ったばかりの1年生の親に気を遣うようにした」と清水善康保護者会長。こうした取り組みとともに結果を出し、ダイヤモンドに新風を吹かせた。


【塚原啓介 監督】
選手たち自身が「上手になりたい」「上で勝負したい」という志を持って好きなことに取り組んできた。何をやるにしても前向きだし、強くなるための要素や考え方を持っているチームだった。(新人戦で)初戦敗退した悔しさから一気に意識も変わって成長し、苦しい試合もしのげるようなチームになってくれた。


【漆戸大晟 主将】
1年から試合に出させてもらっていろんな経験をさせてもらった。やっぱり自分が中心となって、このチームを引っ張っていけたらいいと思ってプレーしてきた。僕が打てなくても周りが打ってくれるし、逆に誰かが打てなくても自分がカバーする。そういう関係ができているチームだった。

取材/大枝令