地域スポーツ

【信州活性プロジェクト・Team長野】世界に誇る長野県の技術で ひのき舞台を疾走する

オール長野で世界へ――。
 壮大な夢を掲げ、支える人々の想いを一心に背負ってサーキットを疾走する。オートバイチームの「信州活性プロジェクト・Team長野」。東信地方に拠点を置き、「長野県から世界に挑戦!」というコンセプトに挑み続けている。2016年から地道に活動しており、その姿に心打たれて応援する人は後を絶たない。

 結成した目的の一つは、長野県の技術力を世界へとPRすること。チームの心臓とも言えるマシン「BMW S1000 RR」には「NISSIN」のブレーキキャリパーをはじめ、バッテリーや塗装も県内製を使用。「高い技術のものが作られている。長野県内でもそういう仕事に関われるんだと、地元の若い世代に夢を持ってほしい」。代表を務める吉井勝行さんは目を細め、「そのためには世界的なレースで結果を残して注目度を上げることが大事」と語る。

 毎年最大のターゲットにしているのは、国際大会「鈴鹿8時間耐久ロードレース」。通称「鈴鹿8耐」と呼ばれ、鈴鹿サーキットのレーシングコースを時速300㎞で高速周回する。その過酷さは「スプリントレースのタイムでマラソンを全力疾走し続けるようなもの」。1周のタイムは2分台、その速さで8時間走り続ける。ライディング技術はもちろん、ライダーの体力、マシンの耐久性、整備技術、全てが一体となってはじめて完走できる。それを成せるのは日々のトレーニングや整備に加え、チームに関わる全ての人の情熱のたまものだ。

 メインスポンサーを持たず、地方の有志団体から派生して世界大会で活躍するチームは、世界的にも類を見ない。県内各地から有志が集い、ライダーも本業のかたわらで技術を磨く日々。チーム発起人であるライダーの櫻山茂昇さんは、普段は県職員として勤務しながら「スポンサーからお金をもらっている以上は、プロ選手と対等に戦わなければいけない」と表情を引き締める。「昨年も200名近い個人サポーターさんにご支援いただいている。背負っている想いの大きさを実感する」と語り、「気合いと根性だけはプロにも負けない」と微笑む。

 「鈴鹿8耐」初参戦の2019年は完走したが赤旗中断。翌2020年から、コロナ禍での2年連続大会中止。ようやく再戦がかなった2022年は念願のチェッカーフラッグを受けつつも、規定周回数に1周届かず完走扱いとはならなかった。「本当にみんな、諦めが悪い。Team長野に関わってくれた全ての人と一緒に戦う」と吉井さん。意地と誇りを持って迎えた本年5月、トライアウトファイナルを見事通過。8月6日の鈴鹿へと、昨年の忘れ物を取りに行く。
取材/佐藤春香


【櫻山 茂昇さん】
非常にたくさんの人に応援してもらっています。大勢の「長野県が大好き」という気持ちを背負って、その思いを繋げていきたいです。欲を言えば、もっと地元の人に知っていただけるとうれしいです。


【東村 伊佐三さん】
「鈴鹿8耐」出場は本年で30回目(大会新記録)。名古屋で活動していましたが、長野県の環境に惹かれて移住を決意しました。自分がお世話になっている「長野県」という地域の力になりたい気持ちです。


【岡村 光矩さん】
私は福岡県在住ですが、「Team長野」と関わり3年になります。長野県の魅力も沢山知りました。「長野」の思いを共に背負い、チェッカーまで精一杯走ります。