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「医療×サッカー」予防医学の新境地へ 全天候型人工芝フィールドCF

医療とスポーツが結び付く、革新的なプロジェクトに乗り出した。長年サッカーJリーグ・松本山雅FCのチーフドクターとして活動してきた百瀬能成医師。今回は一般社団法人MOSC 百瀬整形外科スポーツクリニックに併設する、全天候型の人工芝フィールドを建設するためのクラウドファンディング(CF)を始めた。

 計画している施設は、屋根付き40m×20mでゴムチップを交ぜないロングパイル人工芝。フィールド全域にWi-Fiを飛ばし、IOT技術を導入してクリニックと情報共有できるシステムを取り入れたい考えだ。
 クリニックの診療時間はもちろん、通院するアスリートの早期回復などを目指して医療やリハビリを行う場として機能。高齢者もターゲットとしており、運動指導の場としても活用する。
 そして診療時間以外は一般開放していく考え。サッカーやフットサルを行える場として地域の方々に提供するほか、休日に地域の少年、中高生のスポーツ競技団体に対するメディカルチェック、ケガ予防と技術向上を目的としたサッカー教室の開催、ミニサッカー大会の開催などをイメージ。さらに高齢者に対する健康増進を目的とした健康運動教室、医師と理学療法士の管理下でのウォーキングサッカー大会の開催、ブラインドサッカーなどを想定しているという。

 百瀬医師は「この地域にはまだまだ私設のグラウンドが少なく、特に人工芝を敷いたサッカー場やフットサルコートは数えるくらいしかない。このような施設がもっと増えてもよいのではないかとも考えた」と話す。
 ケガをしたアスリートの治療とリハビリを主導してきた経験から、予防医学の重要性を認識してきた。その中で、Patient’s first(患者第一)の観点から重視してきた「早期回復」には、広大なスペースが必要となることを指摘。「スポーツにおけるケガの予防やリハビリ、復帰プログラムを効果的に実施するためには、広いスペースが必要。それがあれば、スポーツをするために必要な動作の評価や、強度の確認、機能的なトレーニングや様々なスポーツに特化した運動指導や動作解析を安全に行うことが可能になる」と説明する。
 そうした考えを基に今回、実際の活動に落とし込むフェーズへと移行。医師と理学療法士、アスレチックトレーナーが常に情報を共有し合いながら、人工芝フィールドで動作を確認。これによってスポーツの現場や日常生活に復帰できる最適なタイミングを早め、常にそれを知ることができる。

 CFは7月28日まで、専用ウェブサイト(https://readyfor.jp/projects/MOSC2023)で実施している。松本山雅FCの元選手で現エグゼクティブアドバイザーの田中隼磨氏や日本サッカー協会技術委員長の反町康治氏(元山雅監督)、元選手で日本代表FWの前田大然などの応援メッセージも掲載されている。
 このプロジェクトは、日本サッカー協会が掲げる「JAPAN's Way」に基づく。2050年までに日本代表がワールドカップで優勝するための具体的なビジョン。地域に根付いたサッカー文化と地域全体の健康増進がそのキーとなる。このフィールド活用を通じ、最終的にはここで育った選手が世界などの大きな舞台で活躍することを期待する。その「人」と「場所」を創出する、壮大な取り組みでもある。

文・大枝令