医療コラム

うすい院長のひとりごとvol.3  テーピングした方が良いでしょうか?

日々のスポーツ診療のなかで、お子さんやご家族からよく聞かれることを、医学的な根拠に私個人の見解を添えて紹介しております。第3回は「テーピングした方が良いでしょうか?」です。
 指導者に痛みがあると伝えたら「医者に行ってテーピングでも巻いてもらってこい」と言われて来院した方や、痛くて治療に行ったら「芸術的な」テーピング処置を施されたものの、ちっとも痛みが取れないと来院される方がいらっしゃいます。「痛み=テーピング」という考え方でよいものなのでしょうか?
「スポーツの痛みには『繰り返しの負荷によるスポーツ障害』と『一度の外力によるスポーツ外傷』があり、それぞれに対処法がある」とこれまでに述べてきましたが、テーピングについても同様に考えてみましょう。

テーピングの役割は大まかに3つあります

①応急処置
例)試合中に捻挫をしたが、最後まで試合に出られるようにとりあえず固定を行う
②外傷の予防
例)(バレーボールやバスケットボールなど)指の関節周りをテーピングで補強する
③安心感が得られる
例)患部を圧迫されたり固定したりすることで安心して運動ができる
 この中で「痛み=テーピング」が成立するのは①のみではないでしょうか。スポーツ外傷の対処の1つとしてテーピングは有効だと思います。現場で手際よくテーピングを巻くことができるように、動画などで数多く解説されておりますので参照されるのがよいでしょう。
 一方②と③ですが、予防的・安心感を得るためのテーピングにつきまして、他人に勧められて巻くこともあるかと思いますが、あくまでも「本人が巻いてみて具合良いか」どうかです。具合が良ければぜひ行っていただきたいと思いますが、巻いても大して変化が感じられないようであれば、意味のないテーピングは逆に関節機能を低下させることになり、痛みの原因になったり、パフォーマンスに影響を及ぼすことがありますので、やめてもよいのではないでしょうか。
 
また、テーピングの際には
・強く巻きすぎないこと(末梢の循環・神経障害を起こすことがあります)
・肌がかぶれることがある(長時間のテーピングは要注意です。アンダーラップも併用しましょう)
などの注意も必要です。

 「スポーツの秋」です。コロナ禍においては大会そのものが予定通り行われるだけでもありがたいことですが、さらには皆さんがベストの状態で大会に臨めるよう応援しております。

▶PROFILE

薄井 雄企
松本市の整形外科・リハビリテーション科うすいクリニックの院長。 2 名の医師、6 名の理学療法士が在籍し、「手術をせずに、いかに治すか」 をモットーに一般整形外科の診療・スポーツ選手の治療を行っている。 学生時代は野球部。