医療コラム

うすい院長のひとりごとvol.4  温めるのと冷やすのはどちらがいいのでしょうか?

日々のスポーツ診療でよく聞かれることを、医学的な根拠に私個人の見解を添えて紹介しております。第4回は「温めるのと冷やすのはどちらがいいのでしょうか?」です。
「スポーツの痛みには『繰り返しの負荷によるスポーツ障害』と『一度の外力によるスポーツ外傷』があり、それぞれに対処法がある」と前号までも再三にわたり述べてきましたが、今回も同様に考えてみましょう。

 『スポーツ外傷』、たとえば捻挫や打撲の場合を考えると、急性期には患部で強い炎症が起こっており腫れ・熱感・皮下出血などがみられます。このような場合には冷やすことで炎症を抑える、血管を収縮させて腫れを抑えるなどの効果が期待できます。10~15分冷やしたら1時間空けてまた冷やす、を数回繰り返すのがよいと思います。急性期の炎症が落ち着くまで、2~3日は行うのがよいでしょう。
 一方、『スポーツ障害』の場合は患部で疲労による筋緊張が起こっているため、筋肉の疲労を回復させる必要がありますので、血流が非常に重要です。温めることで血管が拡張して酸素や栄養分が組織に行き渡り、また筋緊張を改善させます。ただしランニング後や投球後など、運動直後で患部が熱をもっている時にはまず冷やして、その後で温めた方がよいでしょう。
 また、「冷シップと温シップはどちらが良いですか?」という質問もよくいただきます。
お伝えしたいのは「冷シップを貼ったから患部が冷える、温シップを貼ったから患部が温まるわけではなく、ひんやりという感じ、温まる感じがするだけ」ということです。冷シップにはメントールやサリチル酸メチルといったスースーする成分、温シップにはカプサイシンといったポカポカする成分が入っているため、冷感や温感効果があるのです。どちらも消炎鎮痛剤の成分が含まれていることには変わりありませんので、貼った感じの心地よさで判断していただければよいでしょう。また、冷感や温感は貼ってから数時間でなくなりますが、肝心の消炎鎮痛効果はたいてい半日以上維持されます。皮膚がかぶれるなどの問題がなければ、ある程度の時間は貼っておいてもよいと思います。

 早いものでもう12月、気温もだいぶ下がってきました。オフに向かう競技もあれば、本格シーズンに突入する競技もあります。どちらの方も体を効果的に冷やし、温めて最大のパフォーマンスを発揮していきましょう。

▶PROFILE

薄井 雄企
松本市の整形外科・リハビリテーション科うすいクリニックの院長。 2 名の医師、6 名の理学療法士が在籍し、「手術をせずに、いかに治すか」 をモットーに一般整形外科の診療・スポーツ選手の治療を行っている。 学生時代は野球部。