地域スポーツ

【N.S.T. studio 吉田スタジオ】厳しさの中に、優しさやユニークさ 礼の空手で、人間形成

開始時間が近づくと小学生たちが続々と練習場にやって来て、入口で「押忍!」と一礼。うっかり忘れると中川正士代表が「あいさつは!」と一喝。すると「押忍!」とペコリ。N.S.T. studioではおなじみの光景だ。小学生には空手のみを教えているが、そこには「空手は礼節を重んじる武道。人間形成のうえで大切な時期の小学生には空手を通して人としての基礎を磨いてほしい」との中川代表の思いがある。人間形成の第一歩が「あいさつ」や「感謝」、そして「空手の型」。「これらは人でいうと〝骨〟。姿勢が良くなり、次のステップの一対一で対戦する『組手』で、肉をつけていきます」。厳しく対することも多いが、必ず “なぜ(叱るのか)〟を問いかける。だから生徒は納得する。

 中川代表自身、空手を始めたのはいじめっ子にケンカで勝つためだった。また、大会でも2位が多く、一人で悩み、悔しい思いをしたとか。ただ、「空手の稽古を積むうちに、仲間を増やした方がいいと思うようになりました。そのためには力が強く、頭が良く、人に優しくなければなりません。空手でその精神を培ってほしい」と願う。見学していた保護者は「家で手伝いをしてくれるようになった。先生のようになりたいと言っています」と頬を緩める。高学年の子が低学年に教えるのもここでは日常だ。

 厳しい稽古中、中川代表は何度もジョークを交える。「上段の構え! 冗談じゃないよ。(笑いがないと)ここ笑うところ!」。こんな感じだ。また、放課後児童支援員の資格を取るなど、自らを磨くことも忘れない。厳しさだけではない、寄り添うような優しさがある。

 昨年には、八洲学園大学高等学校(通信制)と提携し、武道・格闘技の修練と高校の学習が両立できる場を築いた。「いろいろな学びを通して、人間力やマネジメント(経営)能力を養い、ジム経営や起業、セルフプロデュース…など、将来に生かしてほしい」と中川代表。

 N.S.T. studioは吉田スタジオのほか、千曲スタジオ、松本スタジオなど県内に5ヵ所、県外にもある。極真空手や沖縄剛柔流拳志會古武道、WSD武器護身術、キックボクシングなど、種目の幅広さは県内唯一。年代もリトルキッズ・キッズ、一般成年男子・女子を設けている。中川代表のほか、各分野のトップクラスの指導者・スタッフがそろい、大会出場やプロを目指す人、ダイエットや健康増進をしたい初心者まで、手厚くサポートしている。

【中川正士代表】

185cm、100kg超えの重量級からは想像できないでしょうか?(苦笑)。高校の社会科教員免許のほか、放課後児童支援員の資格を持ち、子どもたちの健やかな成長を願って、教えています。空手など「スポーツ人」が地域や社会で活躍できる力を育てていきたい。

 

取材・撮影/斉藤茂明