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【松本大学 陸上競技部】県内選手の受け皿となり 大学で花開かせる

「高校時代はトップではなかった選手がほとんど。それでも大学に来てから伸びる人は大勢いる」。松本大学陸上競技部の小松茂美顧問は、そう誇らしげに語る。9月9日〜12日に行われた日本学生陸上競技対校選手権(インカレ)には、同部から男女2人が出場。さらなる強化を図るべく、現在は土台づくりの最中だ。
 小松顧問は約40年の指導歴を持ち、長野陸上競技協会の副会長・理事も兼任。「来た選手をしっかりと伸ばしていくこと」を理念に、各々の目標に沿ったアドバイスを送る。「チーム内でレベルの差があっても、みんなが『自分の記録を伸ばす』という意識はある。全国レベルでも中信レベルでもそういう意味では変わらないし、それが陸上競技の良さ」。自己記録の更新はもちろん松本大学歴代記録も一つの指標とし、選手のモチベーションに繋げている。



 経験豊富な小松顧問が部全体を俯瞰しつつ、現場を主導するのは村中智彦コーチ。松商学園高出身で、名門・順天堂大(千葉)を経て2018年に赴任した。選手として県外に巣立ち、指導者として地元に戻ってきた。「最初は組織の違いに戸惑う部分もあったが、関東圏に行かなくても松本大学が受け皿となって、選手を強くできる環境を整えていきたい」と方向性を示す。

 飯山高出身の和田響一主将(3年)は「高校では伸び悩んだが、いまは着実に伸びつつある」と手応えを口にする。今季は男子400mで県選手権を勝ち抜き、東海大会に出場。全日本インカレも射程圏内にある。一方、チームの長としては「コミュニケーションを苦手としている代だと思う」と分析。2020年の入学時からコロナの影響を受け、苦楽を共にする時間が少なかったのが一因とみられ、「そこは一つ成長できる部分」と前を向く。

 今夏の日本インカレには、男子100mの永井颯太と女子棒高跳の小林由依の2年生2人が出場。ともに予選敗退に終わったものの、永井は10月に行われる国民体育大会への出場も控えている。
 軽井沢高時代から実力を有していた永井だが、大学1年時はケガに苦しんだ。それでも「今年の夏を前に良くなり始めて、やってきたことが少しずつ実を結んできている」と村中コーチ。その上で「選手はどこで伸びるかわからないし、ここで練習を積んで全国に出ていくケースもいくつかある。彼のような選手に周りが引っ張られて『自分にもチャンスがあるんだ』と思ってほしい」と願いを込める。
 個人競技ではあるものの、チームとして切磋琢磨するのも醍醐味。心技体を研ぎ澄ませ、トラックとフィールドでそれぞれの花を咲かせる。

取材・撮影/田中紘夢