地域スポーツ

【野球:寿ヤングバード】受け継がれる絆 野球で広がる地域の輪

桜吹雪の舞うグラウンドに、野球少年の声が響く。父親はともにグラブを構え、母親は桜の下で世間話に興じつつ見守る。寿小学校グラウンドを拠点に活躍する少年野球チーム「寿ヤングバード」は、地域の原風景のような温もりにあふれている。設立50年余。半世紀以上にわたって地域のよりどころとなり、その成長とともに世代をリレーしている。

 和やかな雰囲気に、はつらつとした声が飛び交う。「子どもたちが野球に親しめる場所を」という設立当初からの願いは変わらず、未経験者にも門戸を広げる。通学区の垣根は取り払い、現在は近隣地域の小学1年生~6年生の18人が所属。9時〜17時という丸一日にわたる練習時間も何のその。上條正志監督は「一番元気なのはお昼の休憩時間。皆で遊び回っている」と苦笑しつつ、穏やかに彼らを見守る。

 子どもたちだけでなく、地域住民同士の交流の場という役割も果たす。「地域の輪に入るきっかけになった」と語る上條監督自身、かつては別地域からの転入者だった。子どもが寿ヤングバードへ入団したことで地域住民との交流が増え、顔の見える付き合いへと繋がったという。親同士にも居心地のよい関係性は、地域の絆をより強固なものにしている。

 「皆が仲良し。いつまでも遊んでいられる」と主将の荒木陽翔(はると)くん。小学2年生の頃に先輩から誘われ、野球の楽しさに目覚めた。現在は6年生になり、後輩たちへ背中を示す立場だ。「無理やり誘うことはないし、自分で決められる」と優しさがのぞく一言は、かつて誘ってくれた先輩の姿があればこそ。自らチームの雰囲気を受け継ぎ、下の世代へと繋いでいる。
「どの世代にも上手な子がいて、下の子たちをちゃんと見ている」。就任16年のベテラン指揮官は代替わりしていく彼らを見つめ、「大人が一生懸命教えるより、先輩の姿を見て感じ取るほうが、彼らは育っていく」と自主性を評価する。先輩たちの姿に憧れて「あんなふうになりたい」と、自然と背筋が伸びていくという。

 のびのびと野球に親しみながら、着々とその実力も示す。2021年度 は県内の公式戦12大会を全て無敗。今季も4月9日から開催のGasoneカップを勝ち進み、優勝への意欲を見せる。現在東京ヤクルトスワローズに所属の赤羽由紘選手はチームのOBで、開幕1軍を勝ち取ったことも朗報だ。地域に育てられた若鳥たちは、高空への飛躍も目指す。


【上條 正志 監督】
 子どもたちが成長していく姿が一番のやりがい。「守備と走塁」に重点を置き、しっかり点の取れる野球を教えています。目標はGasoneカップ優勝です。

【荒木 陽翔(はると) キャプテン】
 今年は一試合でも多く勝って、優勝を狙いたい。僕もこのチームに誘われて野球を始めたので、まずは体験に来て「楽しい」と思ったらぜひ参加してほしいです。

取材・撮影/佐藤 春香