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【全国高校サッカー選手権大会 長野県大会】「一体感」示してピッチを制圧 盤石の2連覇を達成

「王者」を名乗るのにふさわしい、堂々たる戦いだった。サッカーの松本国際高が、第102回全国高校選手権県大会で2年連続6度目の優勝。初戦から決勝までの全4試合を全て無失点で勝ち上がり、他を寄せ付けなかった。「去年は力があって勝った。今年は成長して勝った。一人に頼らないチームになった」。試合後の勝沢勝監督はそう話し、満足感を漂わせた。
 圧倒的な切り替え。特にボールを失った直後の即時奪回は、目を見張るものがあった。「去年と違って今年は個でどうにかできる人がいない。その中で何ができるかをずっと考えてやってきた」とボランチ宮下湊太。サッカーは「ミスのスポーツ」とも呼ばれ、ゴールに到達しなかった攻撃は全て失敗になる。だからこそ失った後は重要。松本国際はその瞬間にすかさず複数がボールにアプローチして再び奪回し、また攻撃のフェーズに入る。
 ただでさえ技術水準の高い集団。それを前後半の80分間繰り返せば、まさにつけ入る隙はない。都市大塩尻との決勝もロスト直後の強烈なプレスが猛威を振るい、相手に主導権を握らせない。時折ロングボールを蹴られても難なく対応。センターバック城元諒星は「大会前から無失点で終わりたいと思っていた。なんならシュートすら打たせたくなかった。身体を張るんだという気持ちでやってきた」と汗をぬぐう。
 試合は延長後半の94分、左CKからファーサイドの渡邊智紀がヘッドでゴールに流し込んだ。PK戦の可能性もちらつき始めた時間帯に貴重な先制点を奪い、これが決勝点となって歓喜につながった。「都市大は守備力が高いので1点を争うゲームだと思っていたし、PK戦も想定して練習してきた。その中で相手の武器のセットプレーで点が取れたことは良かった。最後まで走り切る選手たちだと信じていた」と指揮官は目を細める。
 矢越俊哉(びわこ成蹊スポーツ大)ら攻撃陣のタレントが豊富だった昨季は、全国の1回戦で米子北(鳥取)のフィジカルに圧倒されて敗退。そもそも飛び抜けた個の能力を誇るわけではない今季、その中でも全国で勝つためにどうするか。攻撃の核となる久保田剛海は「誰かに頼るのではなく、チーム全体で勝つ。切り替えもそうだし、それを全体で意識してきた」と話す。
 経験豊富な指揮官はチームマネジメントで厳格に規律を運用し、一体感を損なわずに勝ち上がった。特に選手権の時期は、ピッチ外の行動でも自分たちを律しながらの日々。久保田は「ゴミを拾うとか整理整頓にこだわるとかもそうだし、サッカーに対しても日頃の小さな積み重ねがあって、勝利の女神が降りてきてくれた」とうなずく。
 盤石の戦いで参加72チームの頂点に立った松本国際。確かな手応えを胸に、年末年始の晴れ舞台に乗り込んでいく。

取材/大枝令