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【長野県クレー射撃協会】    自分との戦い 盛況を博すクレー射撃

クレー射撃において、長野県は一目置かれる存在だ。2019年の国民体育大会(国体)では、栃木県と並んで総合優勝。県クレー射撃協会の布野兼一会長は「県内には多くの射撃場があって、全国的に見ても環境が整っている。協会として選手強化にも力を入れている」と説明する。2028年の長野国体に向けても、飛躍への期待は大きい。

 県協会は年に数回、佐久平国際射撃場と長野県営総合射撃場で公式大会を開催。国体の代表選考に関わる舞台だが、県外からも選手が集って競技の輪を広げる側面も帯びる。6月26日に行われた第5次大会には、全9都県と日本学生クレー射撃連盟の選手が参加。若手からベテランまで、和気あいあいと楽しみながら競い合った。


 主な種目は「トラップ」と「スキート」の2つ。トラップは横一列に配置された5つの射台を回りながら、前方に放たれたクレー(皿)を打つ。スキートは半円状に配置された8つの射台を回りながら、左右から放たれたクレーを打つ。
 スキートの清水裕樹は「スキートは『なぜ当たらないのか』がわかりやすくて修正が効くが、トラップはそこを判断するのが難しい」と違いを語る。その中でいずれにも求められるのが、メンタルの強さだ。「大会は撃つまでの時間が決まっているので、焦ってくると『当たらない』とわかっていても撃ってしまうことがある」。布野会長も「自分との戦い」と表現しており、いかに落ち着いて射台を回るかがポイントと言える。
 トラップの大内智喜は、2014年に全日本クレー射撃選手権大会で優勝するなど実績豊富。日本クレー射撃協会の強化委員会に所属し、後進の育成にも力を入れる。「長野県はありがたいことに新人が多く入ってきている。成長に期待しつつ、負けないように頑張っている」。専門のトレーナーはいなくとも、先輩たちが助言を送りつつ、背中で範を示すことが若手の育成につながっている。
 選手の大きな目標となっているのは、2028年の長野国体。清水が「自分のモチベーションを上げつつ長野県全体も上げていきたい」と言えば、大内も「切磋琢磨することで全員のスキルアップにつながれば」とチーム一丸で戦う姿勢を示す。地元開催の大舞台に向け、普及と強化の両輪を加速させていく。

長野県クレー射撃協会 布野 兼一 会長

取材・撮影/田中紘夢