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【湘南ベルマーレ 田中聡】J1湘南の「若き心臓」 長野から羽ばたく

ベルマーレから世界へ

 信州からJ1で輝く若き旗手がいる。湘南ベルマーレのMF田中聡(長野市出身)だ。プロ2年目で、昨季から主力としてスタメンに定着。中盤の底で攻守にわたって存在感を放っている。年代別日本代表にも何度となく選ばれ、U-17ワールドカップ(W杯)などの国際大会も経験。「海外に羽ばたいていけるような選手になりたい」との野心を胸に、国内最高峰の舞台で汗を流している。
 三輪小時代にサッカーを始めた。北信地方の強豪・長野ガーフでプレーしたが、当時は全国舞台とは無縁だったという。柳町中学校時代はAC長野パルセイロU-15に所属。そこでも北信越の壁に阻まれ、全国大会には出られなかった。

 「小中学校時代は純粋にサッカーを楽しんでいた。パルセイロではケガも多かったけど、リハビリや体幹に取り組んだ。ピッチでは自由にのびのびとやらせてもらって、だからこそ今の自分があると思う」
 プロになりたい――という夢を膨らませ、県外のJユースに進むことを決断。「レベルの高い環境でチャレンジしたかった」といい、親元を離れて県外でプレーすることにも抵抗はなかった。複数クラブのセレクションを受ける予定だったが、最初に指導者のつてをたどって湘南に練習参加して合格を勝ち取った。

 「最初はついていくのに必死だったけど、慣れていって湘南スタイルを体現できるようになった」と新たな環境にもサッカーにも適応した。湘南はトップチームが象徴するように、攻守ともアグレッシブなサッカーを練り上げるクラブ。その哲学に身を浸しながら成長し、高校1年時の終盤からはトップチームにも練習参加するようになった。
 そして高校2年時、年代別日本代表としてU-17W杯に出場した。グループリーグの初戦は強豪・オランダ。田中は先発フル出場し、3-0の勝利に貢献した。「最初の5〜10分は完全に攻められて全員が『負けた』と思っていた。一瞬の隙を日本が突いてその中で追加点も取れた」という。そのオランダは準優勝。「世界との差はあまりない」と自信を得た。
 3年時はJリーグに出場できる2種登録選手となり、17試合に出場。「攻撃の面では相手をはがすなど自分で行ける部分もあった。ただ、90分間走り切れなかったり、後半に質が下がったりした」と課題もあぶり出された。

 そしてトップ昇格し、迎えた昨季。36試合に出場した。アンカーとして中盤の底を任されると、「攻守において一番大事なポジション。ボールに多く関与するのでやっていて楽しい。ミスもありますが、それをどれだけ減らしてチャンスに繋げるか」と前のめりなメンタルで攻守に奮闘。プロ2年目の今季も変わらず主力で、U-21日本代表にも選ばれた。
 浦和経由の日本代表・遠藤航をはじめ齊藤未月、鈴木冬一など海外挑戦するケースが複数ある湘南。自身も「早く海外に出てオリンピックやW杯にも出たい」との思いを募らせながら、まずは目の前のリーグ戦に全力で打ち込んでいる。

PROFILE 田中聡(たなか・さとし)

2002年8月13日生まれ。長野県長野市出身。
長野FCガーフからAC長野パルセイロU-15、湘南ベルマーレU-18へ進み、2021年にトップ昇格。
身長173㎝、体重70㎏。

取材/大枝令
🄫SHONAN BELLMARE