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【AC長野パルセイロ】変幻自在 オレンジフットボールがベール脱ぐ

「ワクワクさせるようなフットボールを突き詰めていきたい」。そう語るシュタルフ悠紀リヒャルト新監督のもと、AC長野パルセイロは生まれ変わった。例年通りのアウェイ2連戦から始まり、1勝1分で勝ち点4を獲得。数字こそ昇格を逃した昨季と変わらないが、状況は上向きだ。


 開幕戦は優勝候補・ギラヴァンツ北九州に2-0と完勝した。56分に三田尚希、船橋勇真、佐藤祐太が右サイドでトライアングルを形成し、佐藤のクロスから宮本拓弥のヘッドで先制。さらに75分、デューク・カルロスが水谷拓磨とのワンツーから抜け出し、クロスを森川裕基が頭で押し込んだ。指揮官が北九州の弱点と見抜いた「ワイドレーンのスペース」と「クロス対応」をものの見事に突くと、その後は4バックから5バックに変更して試合をクローズした。


 続く第2節は藤枝MYFCに1-1と引き分け。前線に人数をかける相手に対し、序盤から三田と森川の2トップが中盤の背後を狙う。思惑通りに攻め入るシーンも見られたが、フィニッシュに至るまでの精度を欠くと、逆にミスから失点。すると後半、4バックから3バックにシフトして“プランB”に移る。左右ウイングバックに攻撃力のあるデューク・カルロスと船橋を据え、サイドから打開策を見出した。そして85分、船橋がドリブル突破からシュートを放ち、こぼれ球を佐野翼がプッシュ。これが相手の腕に当たってPKを獲ると、デューク・カルロスが冷静に沈めた。
 「相手によって狙うポイントは変わってくる。積み上げてきたコンビネーションは、サイドでも中でも出せる」とシュタルフ監督。北九州戦はサイド、藤枝戦は中盤の背後からチャンスを演じた。さらには『盾の3バック(5バック)』と『矛の3バック』を使い分け、それが結果に直結。変幻自在の“オレンジフットボール”で上々の勝ち点4をもたらした。

 横山雄次前監督のもとで培った堅守も健在だ。指揮官は2試合とも「ほぼチャンスを許さなかった」と手応えを口にする。2センターバックの一角・喜岡佳太も「(相棒の池ヶ谷)颯斗くんと僕は、2人とも前に潰しに行けるのが長所。その中でチャレンジアンドカバーの関係はよく話しているし、すごくやりやすい」と自信を得ている。

 とはいえ、シーズンはまだ始まったばかり。J2から4チームが降格し、大型補強に出たチームも多い“J3戦国時代”において、長野は優勝候補ではなくアンダードッグだ。1文字ずつに意味が当てはめられている「ORANGEの志」の、Gは「Grow Everyday」。日々成長を遂げた先に、悲願のJ2昇格が待っている。

取材/田中紘夢
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