地域スポーツ

【松本ラグビークラブ】     地域と連携して ラグビー熱を松本から

地域とネットワークを築きながら、ラグビーの普及に励むチームがある。1995年に設立された松本ラグビークラブ。未就学児から中学生までが集い、毎週土曜日は都市大塩尻高と松本国際中高で行われる合同練習に参加。日曜日は上高地ラグビースクールとともに汗を流している。


 チームを率いるのは、松本県ケ丘高や信州大でプレーした窪田茂男監督。信州大を卒業後は社会人チームの長野ラガーズで現役を続け、30歳前後で指導者の道へ。創始者である故 八田武司氏の意志を引き継ぎ、中信地域を主にラグビーの輪を広げている。
 2019年にはラグビーW杯が日本で開催。日本代表が史上初のベスト8に進出し、全国的なラグビーブームが巻き起こった。長野県もその例外ではなく「W杯を見てやりたいと言ってくれた子が多かった」と窪田監督。副主将の佐藤幹太くんもその一人で「走っている姿がかっこよかった」と刺激を受け、小学1年からラグビーを始めた。
 とはいえ規模は決して大きくない。低学年、中学年、高学年、中学生と4カテゴリに分かれているが、全体で14人。上高地ラグビースクールと手を組み、練習や交流試合で経験を積む。また各高校との連携や、信州大からコーチを招へいするなど、中信地域での繋がりも広げている。
 「基本的には楽しく、自分たちで考えてやってみることが大事。試合をやれば個人やチームの課題が分かって、それをどうするかという楽しさも出てくる。仲間とみんなで体験したラグビー(楽苦美)は、一生の宝物になります」と窪田監督。卒団後も高校のラグビー部に入ったり、指導者としてクラブに帰ってくるOB・OGも少なくないという。


 佐藤くんとともに副主将を務める井上陽葵(ひなた)くんは、「トライした時が一番楽しい」と笑みを浮かべる。練習ではそういった成功体験を多く積ませるが、“失敗体験”も重視。「まずは自分でプレーを選択して、パスがうまくいくときもあれば失敗するときもあるし、周りが褒めたり励ましたりもする。それは社会も同じだと思う」と、窪田監督は人間的な成長にも目を向ける。
 毎年7月には、“ラグビー合宿の聖地”と言われる菅平高原で合宿を行っている。日本有数の環境も身近にある中で、いかにラグビーを根付かせるか。周囲と連携を図りつつ、未来へと歴史を紡いでいく。

窪田茂男 監督


松本ラグビークラブはみんなで頑張るチームで、仲間の顔を見て安心するような環境を作っています。ご家族の皆さんも子ども達のプレーを見て、みんなで成長を楽しみながら応援するというのが一番。そうやってラグビーが地域に根付いていけばうれしいです。もっと、他地域との繋がり(多様性)も広げていきたいと思います。

取材・撮影/田中紘夢