明るい未来を照らしていた緑色の炎が、風前の灯火となってしまった。松本山雅FCは残り6試合の段階で、J2昇格圏内2位まで勝点8差となる9位。ゲームごとにパフォーマンスの振れ幅が大きく、安定して勝点を積み重ねることができないまま終盤戦まで来た。「戦いが不安定だから今の順位にいる。いいときはいいけど、悪いときも悪いなりにゲームを進めて失点しないようにすればいいけど、やられ方が良くない」。チーム最年長37歳の渡邉千真は厳しい表情でそう話す。
ジェットコースターのような10月だった。4戦負けなしで迎えた8日のいわてグルージャ盛岡戦。中核を担うボランチ・安永玲央が出場停止で不在だったことを差し引いても、悔いの残るゲームだった。狙い通り優勢に試合を進めたものの、ワンチャンスに沈んで先制を許す。その後も失点を重ね、1-4で大敗した。
「本当にただただ申し訳ない。それだけ。結果がすべてです。1点しか取れなかったし、4点も取られてしまった。そういう結果になってしまったことが、本当に申し訳ない」。村越凱光はサポーターへの陳謝を繰り返した。試合後の取材エリアでは選手たちの口は総じて重く、閉塞感を一層際立たせていた。
だが、その後は一気にトップギアに入れる。AC長野パルセイロとの信州ダービー。今季2戦2敗で、前代未聞の「シーズントリプル」を食らう危険性にさらされていた一戦だ。90分ほぼ全ての時間帯で攻守にわたってオレンジの軍勢を封殺。得点こそ野澤零温の1点にとどまったものの、圧巻のパフォーマンスでほぼ完璧な白星をもぎ取った。
この一戦を起爆剤とすればよかったが、次節で再び急速にしぼむ。第32節アスルクラロ沼津戦。攻守とも精彩を欠いたまま失点し、小松蓮の今季18ゴール目で同点とする。しかし後半にミスからゴールを割られると、終盤にもセットプレーの一撃に沈んだ。過去、リーグ戦の信州ダービーでハイパフォーマンスを見せて勝った側は2回とも次節から暗転していた。3回目となる今回もまた、急ブレーキの完敗に終わった。
「失点の仕方がよくなかった。手を抜いている選手はいないし、みんな本気でやっているけど、環境とかでダービーとの違いは少し出てしまったと思う。その中でもできることはたくさんあったと思うし、本当に悔しい」と安永。状況は極めて厳しいが、まだ可能性が完全に閉ざされたわけではない。目の前の一瞬に没頭しながら、目標へと至る蜘蛛の糸をつかむしかない。
取材/大枝令