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戦術変化に手応え 高い適応力を示す

AC長野パルセイロはJ3リーグ第8節のアスルクラロ沼津戦以降、公式戦6試合勝利から遠ざかっていた。とはいえ、ポジティブな要素も散見される内容。基盤を崩さずに“マイナーチェンジ”を施し、第13節・ヴァンラーレ八戸戦で久々の勝利をつかんだ。
 0-1と敗れた第11節・テゲバジャーロ宮崎戦。前半から森川裕基、宮本拓弥らが果敢にシュートを放つも、相手DFに阻まれる。好機を生かせずにいると、後半は宮崎に主導権を握られ、終盤に失点を喫した。公式記録のシュート数は1本。ディフレクトが多かったからに他ならないが、サイド攻撃がなりを潜めたのは明らかだった。
 従来の長野はサイドの幅を効かせ、森川やデュークカルロスの突破力を存分に生かしていた。しかし徐々に相手の対策も進み、「チャンスの回数や攻撃の厚みが少し足りなかった」とシュタルフ悠紀リヒャルト監督。悲観する内容ではなくとも、J2昇格を目指す上では変化が求められた。
 指揮官は続く愛媛FC戦でスパイスを加える。3-1-5-1のシステムで中盤の距離感を縮め、パスのテンポを向上。ボールを失っても狭い距離感からの即時奪回で、2次攻撃や3次攻撃につなげた。相手を深い位置に押し込み、前半に森川のクロスがオウンゴールを誘って先制。後半は追加点を奪えず、逆に同点弾を食らって1-1と引き分けたが、J2降格組の愛媛を圧倒していた。
 変化が実ったのは続く八戸戦。サイドハーフが絞り気味に構える4-2-3-1を敷き、2列目からハイプレスを仕掛ける。15分、17分とショートカウンターで決定機を迎えたが、得点には至らない。すると37分にFKから先制を許すも、わずか1分後にCKから同点。さらに57分、宮阪政樹が豪快なミドルシュートを叩き込んで逆転に成功した。
 このシーンも一度はボールを奪われたものの、狭い距離感から即時奪回。坪川潤之が森川を追い越すことで相手DFがつられ、宮阪のシュートスペースが空いた。今までにない中盤の連動が見られ、6試合ぶりの勝利をつかんだ。
 「追い込み方などが原則として理解できているので、システムをいじっても練習量があまり必要ない」とシュタルフ監督。愛媛戦、八戸戦と今季初のシステムにトライしたが、キャンプから落とし込んできた原則に従って難なく対応できている。積み上げたスタイルに自信を持ちつつ、今後もアップデートを重ねていけば、自ずと昇格ラインが見えてくるだろう。

取材/田中紘夢