高校スポーツ

【松本県ヶ丘高等学校サッカー部】基(もとい)定めて百余年 飛躍の時は今なるか

春一番に荒ぶれ狂う土ぼこりも、なんの妨げになろうか。“縣陵”の愛称で知られる松本県ケ丘高校の、サッカー部。1923年(大正12年)の学校創立とともに創設した「校技」が、今年いよいよ100周年を迎える。
 全国選手権出場9回、インターハイ出場6回、新人戦優勝6回の実績を飾り、専用グラウンドやナイター設備を有する環境。卒業生の送別試合を終えた3月現在は43名のプレーヤーが所属し、新入生も例年20名ほど入部する。

 昨年は県大会ベスト4という結果を示しつつ、全国出場の目標には及ばず。主将の大平安純は「もっとやれた」と悔しさを滲ませる。トーナメントの輝かしさとは裏腹に、高円宮杯1部リーグでは勝ち星を得られず苦しんだ。試行錯誤の末、終盤の2戦を引き分けに留めて手応えをつかんだ。
就任4年目の浅輪賢史監督は「個々の能力を磨きつつ、内容への理解をより深めていく」と、新たなる1年へ備える。かつて自身も駆け抜けたグラウンドに立ち、「卒業生だからこそ熱くなれる」とやりがいを語った。

 「進路選択を優先しつつ、サッカーとどうやって向き合っていくか」と、OB監督は選手たちを見やる。彼らの多くは国立大学への進学を希望。“文武両道”を掲げ、勉強もサッカーも高め合える環境は「県ヶ丘だからこそ」と指揮官は強調する。昨今は授業にスタディアプリを導入し、1コマあたりの時間も5分短縮するなど、学校を挙げて学習の効率化に取り組む。部活との両立にますます高い自律性が求められる環境に、選手たちはグラウンドの内外で声をかけあって切磋琢磨する。

 「勉強も頑張りたくて県ヶ丘に入学した」と大平主将。小学生になる前からボールを蹴り、「ケガの経験もあって、将来への思いが強くなった」。サッカーとの両立に苦心しつつ理学療法士を志し、今年は大学受験に備える。「プレーしながら、色んな経験が自分の中で繋がってハッとする瞬間がある」と、グラウンドの中でも学びを得ている。

 学業の成績を上げるように、サッカーでも上に行きたい――。赤本を反復し、質実剛健に励みつつ、同じ質量の貪欲さをボールにもぶつける。見守る指揮官は「目標に高いも低いもない。難関大学を目指すのと同じこと。口に出していかなければ届かない」ときっぱり。『若き我等は望みも高し』とうたう彼らは、進路もサッカーも等しく高みを目指す。「赤白縦縞」の伝統をまとい、全国への大道を闊歩する。


【浅輪 賢史 監督】
母校で教えることにプレッシャーもあるが、ポテンシャルの高い集団で非常にやりがいを感じる。常に全国大会を目指して、質も強度も高いレベルでやっていくのが目標です。

【大平 安純(あずみ) 主将】
後輩にも恵まれていて、仲間と一緒に勝つことが一番のやりがい。今年の目標は「全試合フルタイム出場」。まずは総体に向けて全力を尽くして、全国へ行きたいです。

取材・撮影/佐藤春香