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【松本大学 教員紹介:人間健康学部 スポーツ健康学科 山本薫准教授】いくつになっても丈夫な足腰を 誰もができる筋トレで地域を活性化

山本ゼミナールのテーマは「個人へのアプローチを通じた地域全体の健康寿命の底上げ」。いくつになっても丈夫な足腰で好きなところへ出かけられるよう、「筋トレ」がもたらす健康効果について研究・分析し、地域の健康運動教室などのフィールドワークで実践へと還元する。アプローチの対象は中高年~高齢者としているが、「若者からおじいちゃん、おばあちゃんまで、幅広くサポートできるように」と、様々な世代へ応用の利く指導を学生とともに模索する。

 「筋トレ」と聞くとハードなイメージを持つが、根底にあるのは「元気に動けるままで歳をとってもらいたい」という、山本薫准教授(スポーツ健康学科)の思い。以前勤務していた「あいち健康の森健康科学総合センター」では、運動教室に集う地域の高齢者たちが自然と新しいコミュニティを作り、ともに出かけることを楽しんでいたという。ひとりひとりの健康が地域活性化に繋がっていることを実感し、「いつまでも元気であちこち行けることのすばらしさ」を感じ、研究に結びついた。
「身体活動量を落とさないための筋力づくり」という観点から、動脈硬化や高血圧など循環器に悪影響をもたらさない強度のトレーニングを研究。「例えば心臓の手術をした人やがんのサバイバーの人たちにとっても、『どれくらいの運動強度がリハビリに最適か』という指標になる」と、基礎疾患を抱える人たちへのサポートにも応用していきたい考え。「運動強度(どれくらいの強さの運動を,どれくらいの時間と頻度で行なうか)をコントロールすることで、血圧上昇などの悪影響を抑えつつ運動効果を得られるのでは」と仮説を立て、実際にデータを採取し調査を重ねている。
 山本ゼミのフィールドワークはそうした現地調査に加え、ゼミ生が「指導者」として成長する学びの場でもある。自治体や学校などから要請を受けて運動教室を行なう際には学生が主体となって実践し、「対象者が何を求めているか」を肌で学んでいく。よりよい声かけや関わり方を手探りする中で、学生たちは自然と互いのふるまいを観察し合いながら成長していくという。参加者が一生懸命に取り組む姿を見て、「気持ちに答えられるようになりたい」とレポートに残す学生もおり、「事前練習でピンと来なくても、現場で気付くことはたくさんある」と山本准教授。「自分本位にならず、何が相手のためになるのかを察知して実践する力をつけてほしい」と願いを口にする。
 「人々の力になりたい気持ちのある学生とともに、あちこちへ様々なサポートに出かける」というのが山本ゼミの姿勢。地域で暮らすひとりひとりの健康長寿から、地域全体を健康に。誰もが長く人生を楽しめる社会を目指し、取り組みは続く。


Profile:
山本 薫(やまもと かおる)
大分県大分市出身。鹿屋体育大学・大学院卒。名古屋大学大学院在籍を経て、あいち健康の森健康科学総合センターでは運動指導を実践のかたわら中高年の筋力トレーニング効果について研究。松本大学人間健康学部に着任後は、長野県の心疾患死亡率を鑑みて血管(動脈硬化予防)と運動トレーニングの関係について研究を重ねる。スポーツが好きで、小学生~大学生まで続けてきた野球が趣味。ハーフマラソンも愛好し、安曇野や軽井沢、駒ヶ根など県内各地のレースに参加しては大自然の雄大さを満喫している。

取材/佐藤春香