竹刀を交える音とともに、気合の入ったかけ声が響き渡る。岡谷市民総合体育館の剣道場。「切磋琢磨」を道場訓に掲げる岡谷市剣道協会では、未就学児〜壮年と幅広い年齢層の剣士が仲間とともに腕を磨く。松瀬将克会長は「勝つことよりも、目標に向けてたゆまぬ努力を続けることに重きを置いて、辛いことにも負けない精神力を身につけてほしい」と話している。
創設は1954(昭和29)年で、昨年70年の節目を迎えた。松瀬会長が指導の上で大切にしているのは、全日本連盟による剣道の理念「剣道は剣の理法の修錬による人間形成の道である」。そこには「試合での勝ち負けはあくまで結果論。相手がいる試合は、自分だけの努力ではどうにもならない側面がある」と指導への想いを語る。実際、小学1年生から道場に通って5年目となる小松勇翔も「試合に負けても叱られることはないが、稽古に集中できていない時や、稽古中に気持ちが緩んでいる時に注意を受けることがある」と話す。
主な活動は週3回の練習と各種大会への出場。昨年は2月の第10回県小学生選手権の女子で須江優月が優勝を果たした。今年2月の第34回東日本選抜如月剣道大会では、高学年男子団体がベスト16進出。大将を務めた山田仁太は「練習の時から平常心を心掛けているので、緊張せず落ち着いて取り組めた」と話し、副将の西留千隼も「優勝経験があるチームが相手の時は緊張することもあるが、深呼吸をするなど気持ちをコントロールして臨むことができた」と鍛錬の成果を口にする。指導陣も、昨年6月の第45回 全日本高齢者武道大会で小笠原明がA組(70ー74歳)で個人3位、女子団体メンバーの味澤れい子が優勝を果たすなど実績を残した。
生涯スポーツとして年代を問わず打ち込める剣道。幅広い年代が同じ道場に立ち、時には教えを乞い、時には剣を合わせながらお互いの技術を磨く。「父と兄の剣道をしている姿を見て、カッコいいと思ったことがきっかけだった」と剣道を始めた理由を話す井口和奏のように、両親や兄弟に憧れて剣道を始めた稽古生も多い。指導者が修練に励む姿は、身近な目標としての大きな役割も果たしている。
井口 和奏 さん(中学1年)
剣道は、年長の時に父や兄の姿に憧れて始めました。剣道をしていて楽しいと思うのは、相手から1本をとれた時です。中学生では大会へ出場する機会も増えるので、県大会出場を目指して頑張ります。
山田 仁太 さん(中学1年)
兄が剣道に取り組んでいる姿を見て、カッコいいと思ったことが剣道を始めたきっかけです。大会で順位が高かった時にやりがいを感じます。中学生でも大会で上位に入れるよう、技術の向上を目指します。
西留 千隼 さん(中学1年)
小学5年生から剣道を始めました。楽しいと感じるのは、努力した結果、試合に勝てた時。相手が強いと緊張することもありますが、上級生との試合でも勝利して、大会優勝を目指したいと思っています。
取材・撮影/児玉さつき