「クラブとしては毎年、長野県の頂点を目指している。それは今季も変わらない」。藤井瑞稀主将が言うように、シュロス松本にとって県制覇は大きな目標だ。昨季の全日本女子サッカー選手権大会(皇后杯)長野県大会はベスト4。決勝を前に涙をのんだ。
選手と指導者はともに「難しいシーズンだった」と口をそろえる。新型コロナの感染拡大を受け、長野県女子サッカーリーグが開幕から約1カ月で中止。長期戦を避けるべく、トーナメント形式のカップ戦に切り替わった。種山勝也ゼネラルマネージャー(以下GM)は「目の前の試合に勝たないと次がないという状況が続いた。選手たちは相当しんどかったと思う」と当時を振り返る。
それでも「一人ひとりがやれることを見つけて、チームとして力がついた」と藤井。1回戦と準決勝を順当に勝ち抜き、決勝ではレゼル松本に6-2と大勝して頂点に立った。
その勢いのまま臨んだ皇后杯。クラブチーム主体のリーグ戦と異なり、県内の強豪高校など学校単位のチームも参戦することから、“真の長野県女王”を決める戦いと言える。1回戦は信州大にPK戦の末に勝利。しかし、続く準決勝で松商学園に1-4と大敗し、2016年以来の優勝を逃した。藤井は「ゴールに向かう意識が足りなくて、シュートが少なかった。決定力でも他のチームと差がついているので、強化しないといけない」と課題を口にする。
チームには中学生から社会人まで、幅広い年代が在籍。種山GMは「中学生は成長が必要だし、社会人は結果を残さないといけない。シュロスらしく楽しみながら結果がついてくるのが一番」と話す。以前は年代別に分かれて練習していたが、ここ数年は合同練習にシフトして“雰囲気が変わりつつある”。選手間のコミュニケーションを活発化し、2010年の結成当初から継続してきたポゼッションサッカーに磨きをかけている。
今年はまん延防止措置法の度重なる延長を受け、約2カ月間の活動休止を余儀なくされた。3月7日にようやく活動を再開し、開幕戦(17日現在は未定)に向けて準備中。若さと経験を融合させ、今季こそは長野県の頂点をつかみ取る決意だ。
藤井瑞稀主将(昨季時点)
私は中堅として、チーム全体が同じ目標に向かえるように、上の年代と下の年代の橋渡しのような役割を意識しています。中学生もたくさんいるので、プレーや行動で引っ張れるように、まだまだ成長したいです。
取材・撮影/田中紘夢