AC長野パルセイロは高木理己監督の下、プレシーズンから攻撃的なスタイルを磨いてきた。その〝AC長野スタイル〟は開幕からゴールという結果には結びついたが、勝ち点は伸び悩んだ。選手たちは「やりたいサッカーはできている」と口をそろえたが、やはり勝利こそが自らのスタイルに自信を植え付ける。そんな中、4月24日に行われたYBCルヴァン・カップのJ1京都戦はまさにチームに自信をもたらす一戦となった。
序盤に課題のCKから2点のビハインドを背負ったが、前半39分に左サイドのMF田中康介が供給した低い弾道のクロスにMF三田尚希が頭で合わせ、1点を返した。高木監督が「チームを勇気づけるゴール」とたたえた一撃で追撃態勢を整えた。
後半は前線からのプレスで奪ったボールを交代で入ったMF忽那喬司やMF安藤一哉が前進させ、攻撃のリズムをつくった。1点差のまま迎えた後半39分にMF西村恭史が左クロスを上げると、右サイドからゴール前に進入してきたDF黒石貴哉が「相手はJ1。やりきらないともったいない。いちかばちか」とダイレクトボレーをゴールに突き刺した。試合を振り出しに戻し、前後半15分ずつの延長戦に突入した。
延長前半はGK金珉浩(キム・ミノ)が好セーブを連発して京都の攻撃をはね返すと、延長後半4分に忽那の左CKをDF杉井颯がヘッドでたたき込んで勝ち越した。
しかし、残り時間は10分以上。今季はリードしながら終了間際の失点で勝利を逃す試合を繰り返していたことに加えて、相手は高木監督が「J1屈指の圧力を持つチーム」と警戒する京都。失点の可能性も十分にある中で、最終ラインの選手が体を張り、前線の選手もプレスを緩めず圧力をかけ続けた。最後までゴールを許さずに耐え抜き、試合終了のホイッスルがピッチに響くと長野Uスタジアムはサポーターの大歓声に包まれた。
J1チームに逆転勝ちし、課題のあったリードした終盤の戦い方でも成長を見せた。杉井が「京都戦での成功体験が生きている」と話したように、大きな手応えを得たチームはここから勝利を重ねた。
120分の激闘から中2日で戦ったJ3第11節の北九州戦で連戦の疲労を乗り越えて勝利すると、アウェーに乗り込んだ第13節は今季初の無失点で宮崎を破りリーグ戦3連勝。5月12日に行われた県選手権決勝ではPK戦の末に松本山雅を倒し、今季最初の「信州ダービー」を制した。この間、今季は出場機会の少なかった選手も起用しながら勝利を収めた。忽那が「チーム全員が『長野スタイル』を表現できている」と語ったように、チーム力の底上げという面でも大きな収穫を得たと言える。
J3第14節を終えて9位。2位と勝ち点3差につけるが、14位までも勝ち点3しか離れていない。手にした自信を力に変え、大混戦の上位争いに食らいつく。
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