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4人目のJリーガー誕生 夢をかなえる街クラブ

 今夏、4人目のJリーガーを輩出した街クラブがある。中信地方3市を拠点に活動するFCセダックだ。湘南ベルマーレU-18に進んだ原直生のトップ昇格が内定。今井典良監督は「Jクラブに落ちた選手もいれば、あえて街クラブを選んだ選手もいる。その多くが小学時代はナンバー2だったが、個を伸ばせばいくらでも化ける。これからも夢をかなえる街クラブであり続けたい」と力を込める。
 セダックは未就学児も参加可能なスクールと、ジュニア、ジュニアユースの3部構成で活動している。ジュニアユースは1999年に設立。3期生の三澤慶一がヴィッセル神戸に入団し、初のクラブ出身Jリーガーとなった。その後も6期生の代田敦資(元V・ファーレン長崎)、8期生の寺沢優太(AC長野パルセイロ)がプロ入り。今年7月には18期生に当たる原がトップ昇格となり、4人目が誕生した。
 チームを率いる今井監督は、個を伸ばすことに重点を置いている。多くのジュニアユースの選手は、中学年代からセダックに入団。3年間という限られた時間だが、「子どもたちは全国レベルの強豪校やJユース、あるいは県内の強豪校を目指している。その夢に合わせて、一人ひとりの特徴を最大限に伸ばしたい」と指導方針を明かす。
 4人目のJリーガーになった原については「ドリブルはスピードに乗ると誰も止められない。足元がうまいだけでなく、走力もあった」と中学時代を振り返る。唯一の欠点としてフィジカルの未熟さを挙げたが、「Jユースでも鍛えられるので、そこは目をつぶっていた」と、個を伸ばすというスタンスに揺るぎはない。
 3人目のJリーガーである寺沢は、ジュニアユースから入団。「サッカーノートに目標を書くところから始まった。選手一人ひとりの夢に寄り添ってくれたので、自分がすべきことを自然と考えられるようになった」と当時を思い返す。現主将の和久匠は「今井さんは厳しい監督。その厳しさのおかげで勝てた試合もあるし、強くなれている」と成長を実感する。
 卒団後の進路の可能性は、高校サッカーやJユースだけにとどまらない。2018年には、パリ・サンジェルマン(PSG/フランス)の育成組織の練習に3選手が参加した。世界的メガクラブのPSGには現在、メッシやネイマール、ムバッペらが所属。世界への門戸も開かれているのだ。信州からJリーガーだけでなく、世界的スターが生まれる未来が、いつか来るかもしれない。
<取材・撮影/田中紘夢>