地域スポーツ

長野県勢初の快挙 全日本U-12選手権でベスト8 松本山雅FC U-12

松本山雅FC U-12が、小学生年代で最大の大会となる全日本U-12選手権(2022年12月26〜29日、鹿児島県鹿児島市)でベスト8に入った。県勢としては田中隼磨さんを擁した1994年の松本ヴェガ(当時)が16強に入って以来、28年ぶりの最高成績。このチームを率いた矢田部監督は「県勢初のベスト8。胸を張って彼らの次につなげてもらえれば」と話す。

 本番を前にして、若き雷鳥の卵はぐんと成長した。11月3日の全日本U-12選手権県予選で3年ぶり4回目の優勝を果たした、その2週間後。フジパンカップ北信越選手権で1回戦敗退を喫し、順位決定戦に回った。16チーム中13位。吉澤凰河主将は「去年優勝していたフジパンカップの初戦で負けて、このままじゃダメだと思った。それぞれみんなが同じことを感じていて、雰囲気が変わった」と振り返る。

 この敗戦を機に、トレーニングへの姿勢がより前向きになった。指揮官は振り返る。「1回戦で敗退してからの1カ月間の伸びには驚かされた。一丸となり、本気でサッカーと向き合ってくれて、『目の色が変わる』というのはこういうことなんだと実感させられた」。集大成の大会で目標に掲げた日本一を達成するため、全員が一つになって練習に打ち込んだ。
 そして迎えた、年末の本番。1次ラウンド初戦は名古屋グランパスU-12と当たり、10分に渡邊創太が先制する。さらに内藤凰士郎が29分までに2点を奪って3-0。その後2失点したが、追い上げをかわして白星発進した。第2戦の相手は徳島ヴォルティスジュニア。渡邊のほか中村裕ノ進、田中大貴のゴールに加え、吉澤主将が2点を挙げて5-0と快勝した。サガン鳥栖U-12戦は2勝同士の首位決戦。1-3で敗れて組2位となったが、各組2位同士の勝ち点差などによりラウンド16に駒を進めた。
 ベスト16によるトーナメント。この時点で県勢としては28年ぶりだ。相手はソレッソ熊本U-12。山雅はボールを握るのが得意だが、相手はそれを上回る。自陣で耐える展開が続いたものの、0-0のPK戦3-2で勝利。長野県の歴史を、新たに切り開いた。
 続く準々決勝は、結果的に優勝したレジスタFC(埼玉)に1-2。5分までに2点を先行され、1点を返したが及ばなかった。「ドリブルを武器としてきたけど、相手が速いとあまり出せなかった。この経験を生かして今後は伸ばしていきたい」と吉澤主将。吉澤と並んで大会5試合で3点を挙げた渡邊は、課題を口にする半面「周りと関わりながらワンタッチなどで繋ぐ部分は練習を重ねて通用した」と手応えも得た。

 アカデミーは、トップチームの選手を輩出するのが最大のミッション。その意味では、将来への期待が集まる結果となった。ただ、これはあくまでも通過点。矢田部監督も日頃から「トロフィーや結果は次のカテゴリに持っていけない。持っていけるのは技術と、どうしたらうまくなれるか――という考え方だけ」と口にしている。
 敗戦を糧に一念発起し、自立を心がけてサッカーに打ち込んだ。目標には届かなかったものの、全国8強という歴史を刻んだ。このプロセスを経験値とし、まずは次のカテゴリでさらなる成長を目指す。

【矢田部匡 監督】
相手の映像などもかなり提示し、戦い方を整理して大会に臨んだ。プランに対して修正もしたが、戦術的な部分を積み上げてきた選手たちはうまく対応してくれた。ベスト8に入れたのは良かったが、予選でも決勝トーナメントでも相手は個の能力が高かった。技術もフィジカルも率直にまだまだ足りていない印象。長野県は運動能力テストの数値も低く、長野県の指導者の方みんなで打開策を考えていく必要があると思う。


【吉澤凰河 主将】
長野県で初めてという結果を仲間と一緒に勝ち取れたことはすごくうれしい。厳しい戦いだったけど、みんなで全力を尽くして戦えた。県外の強いチームも去年の6年生も、荷物をそろえることなどピッチ外の部分がしっかりしていたので、自分たちの代でも「日頃の取り組みでも日本一になる」と伝えてきた。(U-15に昇格しても)経験をしっかり伝え、もっと強い山雅を作っていきたい。

取材・撮影/大枝令