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連勝で首位争い 躍進の鍵はチーム内競争

ホーム開幕戦で屈辱にまみれたチームが首位争いを演じると誰が想像できただろう。サッカーJ3のAC長野パルセイロは長野Uスタジアムで行われた第3節で奈良に0-3の完敗。しかし、第5節から怒濤の3連勝を果たし〝満開の春〟が訪れている。

 突然の躍進に見えるが激闘を振り返ると、確かな強さが隠されている。連勝のスタートとなったYS横浜戦は緊迫した展開が続く中、後半16分に均衡を破った。1分前に交代で入った西村恭史が右FKを押し込んで先制。すると、シュタルフ悠紀監督は故障から復帰した近藤貴司や大野佑哉ら経験豊富なメンバーを矢継ぎ早に投入。隙のない采配で虎の子の1点を守り切った。

 交代カードを駆使して試合終盤まで勢いを保つ戦いは第6節の讃岐戦(4-0)、第7節の相模原戦(1-0)も同じだ。突破力のある音泉翔真、空中戦に強い193センチの佐古真礼…。新加入選手を中心にベンチメンバーは多彩で、戦況に合わせて指揮官が最善手の交代カードを次々に切る。

 実は連勝前は負傷者や出場停止の主力を抱えて苦しい台所事情だった。それが近藤の復帰を皮切りに、ようやくベストに近い布陣を組めるようになった。ただの3連勝ではなく、3試合連続無失点という盤石の強さを発揮した理由はそこにある。

 さらにシュタルフ監督は「けが人が戻ってきてチーム内の競争が活性化している」と強調する。特に競争が熾烈なポジションが1.5列目だ。既に3ゴールを挙げている三田尚希(木曽町出身)や副主将の佐藤祐太、近藤ら力のあるアタッカーがひしめく。開幕から先発出場を続ける佐藤も「うかうかしているとスタメンに入れるか分からないほど層が厚い。競争に負けないようにしたい」と危機感を口にする。

 激しい競争は、土台を堅固にする好循環を生む。今季のAC長野はベンチから外れたバックアップメンバーを「背後のチーム」と呼ぶ。4発で大勝した讃岐戦に向けた練習では、相手の武器とするセットプレー対策のメニューで、試合メンバーと背後のチームが実戦さながらの緊迫した攻防を繰り広げたという。指揮官は「背後のチームに回った選手たちが緊張感を持ってやってくれるので練習の質が上がる。それが結果に出ている」とうなずく。

 昨季、ルーキーで6ゴールを挙げた山中麗央(千曲市出身)は今季からエースナンバーの10番を背負う。しかし、3連勝中はベンチ外だった。「貪欲にゴールに向かう姿勢が、去年に比べてまだまだ足りない。練習から結果を残してチャンスをつかみたい」と虎視眈々と牙を研ぐ。
 現状維持では取り残される。自らの限界に挑み続けた者だけがピッチに立つ。全員で切磋琢磨しながらシーズンを駆け抜けた時、悲願のJ2昇格が見えてくる。