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破竹の連勝街道 総力でラストスパートへ

「残り10戦 勝ち点30を共に掴み取ろう」
 9月18日、サンプロ アルウィン。第25節ガイナーレ鳥取戦で、ゴール裏にこう書かれた横断幕が掲出された。今季のJ3はいわきFC、鹿児島ユナイテッドFCの上位2チームが先行し、そこに松本山雅FCが食らい付く構図。第25節を終えて4位藤枝MYFCまでが、一般的に昇格ラインと言われる「試合数×2」の水準を超えている。かなりのハイペース。だからこそ、山雅には「全勝」の気概が求められるのだ。
 この横断幕を見た名波浩監督は、ロッカールームのホワイトボードに文言を拝借して選手を鼓舞。試合後の記者会見でも、「決して夢物語ではなく、自分たちが全部勝てばオートマチックに昇格できる」と強調した。

 実際、終盤戦にさしかかって右肩上がりの好調ぶりが際立つ。コロナ禍などで3戦未勝利(1分2敗)と苦境に陥ったものの、以降は5連勝でV字回復を果たした。ボールを支配されながらも要所を締める守備が冴え、25節終了時点で総失点数が2番目に少ない20。理想はさておき勝負に徹し、いずれも1点差のゲームをしたたかに制してきた。
 その要因は何か。もちろんGKビクトルなど守備陣の働きによる側面はあるが、チーム全体として昇格に向けて意識共有できているのも大きい。佐藤和弘は「ボールを握る相手に対してじれる時間帯がすごく減った。イラつきたくなるのを押し殺して『チームのために』という気持ちでプレーする時間が長くなった」と明かす。

 これに加え、総合力の高さも改めて感じることができた。鳥取戦は左サイドを支えてきた外山凌と常田克人の2人が同時に出場停止で、さらにチーム最多10得点のエース横山歩夢も不在。難しい戦いになると思われたが、ともに今季初先発の橋内優也と中山陸が奮闘するなど、穴を感じさせないパフォーマンスを披露した。

 「ケガの選手や出場停止の選手がいて難しい状況でも勝ち点3を取れたのは、チーム全体の底上げができているから」と橋内。8月にJ2ヴァンフォーレ甲府から育成型期限付き移籍で加わった中山も「まず90分出てチームの勝利に貢献できたことはすごくうれしい。1失点してしまったが、勝てたのはすごくよかった」と声を弾ませた。

 試合は11分に小松蓮が13試合ぶりのゴールを決めて先制。29分には相手GKのミスを見逃さなかったルカオが追加点を挙げ、逃げ切り勝ち。チームとして課題に浮上していた追加点もゲットし、結果的にはそれが生きて白星を手繰り寄せた。

 手堅く勝ち点3をつかむ試合運びで、大崩れはしづらい。「残りの試合は内容より結果が絶対に大事。サポーターとともに目標を達成して上にいきたい」と、ディフェンスリーダーの大野佑哉はチームの思いを代弁する。全員一丸でJ2へ――。山雅のロングスパートが、始まった。

取材/大枝令