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【小平奈緒】漂う進化の気配 2大会連続「金」へ視界良好

 青と白のユニフォームを纏い、北京五輪に向けて滑り出した、スピードスケート女子の小平奈緒(相澤病院)。10月上旬に長野市エムウェーブで公開練習を実施し、下旬に同会場で行われた全日本距離別選手権でも500メートルを7連覇。スピード日本女子初の金メダルに輝いた35歳が、さらなる進化を遂げてシーズンインした。
 小平は3月の長根ファイナルで短距離2種目を制覇。その後は約1カ月間のオフを挟み、4月から再始動した。トレーニングの主眼は「体の機能改善」「体力強化」「技術トレーニング」という3つの柱だ。昨季から続く左股関節の違和感と向き合いながら、6月には自転車長距離走で自己ベストを大幅に更新。「何年も同じようにチャレンジしてきたが、今になって自己ベストが出たことに驚いた」と笑みをこぼす。結城匡啓コーチも「衰えは全く感じない。技術的にもまだまだ進化の気配がある」と分析した。

 8月には東京五輪をリモート観戦。柔道男子・大野将平(73キロ級金メダル)の「自分が何者なのか証明できた」という言葉に感銘を受けたという。「私たちは自分の生きざまを皆さんに見ていただく機会が少ない。五輪という舞台で『自分が何者なのか』を証明した姿が輝いて見えた」。その他にも多くのアスリートから刺激を受け、「熱い気持ちを引き継いで五輪シーズンに臨める」と前を向く。
 昨季は台風19号の被災者に寄り添い、りんごをモチーフとした赤いユニフォームを着用。今季は医療従事者に感謝を示す「青」と、白衣をイメージした「白」をあしらった。地域医療の中核を担う病院に所属するアスリートとして、「皆さんの支えがあって滑ることができていると忘れないために」という思いを込めた。
 そのユニフォームに身を包んでの初戦は、10月22日の全日本距離別選手権だった。女子500メートルで37秒58を記録し、7年連続12度目の優勝。1000メートルでも2位に入った。11月12日からはワールドカップ(W杯)が開幕。年内に行われる4大会と12月末の代表選考会の結果次第で、北京五輪への出場が決まる。


 平昌五輪後は「金メダリストらしくしなければ」とプレッシャーを覚えていたが、今はいち競技者として充実感に満ちているという。4度目の五輪、そして2大会連続の金メダルを――。前人未到の領域へ、視界は良好だ。

取材/田中紘夢  
写真提供/相沢病院