パラスポーツ

水泳でめきめき昇級       “世界のスミス”へ!

 若きパラリンピアン候補は、無限の可能性を秘めている。小学4年生のスミス桜さんは、アメリカ人の父と日本人の母を持つ。両下肢に麻痺を抱えているが、足が不自由ながらも持ち前のバランス感覚と運動神経の良さで、難しいと思われたスポーツもこなしてきた。

 「体を動かすのはもともと好きだった」。そんな少女が5歳で始めたのは、水泳だ。数あるパラスポーツの中でも水泳は幼少期からでも挑戦しやすく、兄が習っていたことにも影響を受けた。最初は水に顔をつける練習から入り、「2、3回目くらいでできるようになった」。その後は徐々に難易度を上げ、クロールにも挑戦。プライベートレッスンを担当している遠藤昌利さん(SAM石芝)は、「少しずつできることを増やして、褒めてあげることを心がけていた」と言う。小さな成功体験を積み重ね、今では背泳ぎや平泳ぎ、バタフライも習得済みだ。

 だが、時には困難にも直面する。壁を強く蹴るターンもその一つだが、「『こんな形でやってみようか』とアドバイスをして、もしそれができなければまた違う方法を考えている」と遠藤さん。本人に合ったやり方を模索し、泳ぎの幅を広げている。並行してタイムの向上にも励んでおり、スミスさんは「前までは背泳ぎが得意だったけど、きょうはクロールが一番速かった」と取材時に微笑んだ。20級からスタートした検定は、6級まで到達。現在は4級を目標としており、「楽しみながらどんどん上にいきたい」と意気込む。

 昨夏の東京パラリンピック後は、車いすテニスやシッティングバレーボールにも挑戦。さまざまなスポーツに触れる中で、水泳とともに没頭しているのは車いすバスケットボールだ。幼児期から障がいを感じさせない運動感覚を持ち、競技への順応力は高かった。その中で水泳と車いすバスケットボールに心を奪われ、「長く続けていきたい」とうなずく。

 「将来的にはパラリンピックを目指していきたい?」――そう聞くと、恥ずかしがりながらも首を縦に振った。その優れた運動感覚には両親のみならず、元パラリンピアンの奥原明男さん(車いすバスケットボールなど)や加藤正さん(アイススレッジスピードレースなど)も目を留める。多競技で活躍する可能性を秘めながら日々スポーツに打ち込んでいる。

取材・撮影/田中紘夢